・転機の4サイクル
・準備
・遭遇
・適応（順応）
・安定化
・再帰性/相互依存性/不連続性
概要
理論の基本
ニコルソンは、キャリアにおける「転機」は一度きりの出来事ではなく、予測可能な4つの段階を繰り返すサイクルであると提唱しました。この理論は、クライエントが転機のどの段階にいるかを理解し、適切な支援を行うための重要なフレームワークです。
転機の4サイクル
第1段階
準備
第2段階
遭遇
第3段階
適応
第4段階
安定
第1段階：準備 (Preparation)
転機が起こる前の段階。新しい役割や環境に対する期待と不安が入り混じり、情報収集や心の準備をします。
クライエントの状態
- 期待と不安の混在
- 変化への動機づけ
- 情報収集
- 自己評価、現実吟味
支援のポイント
- 期待と不安を傾聴し、感情を明確化
- 客観的な情報提供を支援
- 自己理解を深める支援
第2段階：遭遇 (Encounter)
新しい役割や環境に足を踏み入れた直後の段階。「現実」と「期待」とのギャップに直面し、戸惑いや驚きを感じることが多い時期です。
クライエントの状態
- リアリティ・ショック
- 期待と現実のギャップに戸惑う
- 意味の探求
- 役割や人間関係の把握を試みる
支援のポイント
- 感情を受容し、プロセスを正常化
- 状況の客観的な整理を支援
- 意味づけの支援
第3段階：適応 (Adjustment)
新しい環境に慣れようと、学習し、試行錯誤する段階。自分を変化させ、周囲との関係性を構築していきます。
クライエントの状態
- 学習とスキルの習得
- 役割行動の試行錯誤
- 周囲からのフィードバック受容
- 自己概念の変化
支援のポイント
- 目標設定と行動計画の策定支援
- 強みを活かした役割遂行の促進
- 関係構築の支援
第4段階：安定 (Stabilization)
新しい役割を習得し、精神的に安定してパフォーマンスを発揮できる段階。その役割が「当たり前」になります。
クライエントの状態
- 役割の習熟
- 有能感、自己効力感の向上
- 貢献感
- 次の変化への「準備」段階へ
支援のポイント
- 努力を労い、成果を確認
- 今後のキャリア展望の対話
試験で問われる重要ポイント
サイクルの循環性
「安定」はゴールではなく、次の「準備」段階への入り口。キャリアは常に変化し続けます。
段階の移動
サイクルは一方向とは限らない。前の段階に戻ることもあります。
転機の種類
「自発的」か「非自発的」かで、「準備」段階の有無や質が異なり、プロセスに影響します。
支援の焦点
クライエントが今どの段階にいるかを見立て、その段階に応じた支援を行うことが重要です。
ニコルソンの「転機の4サイクル」とは？
ニコルソンは、人が仕事上の役割の変化（転機）を経験する際、誰もが通る心理的なプロセスを4つの段階に分けました。これを「移行サイクル」または「転機のサイクル」と呼びます。引っ越しや入学に似ていて、段階を踏んで慣れていくイメージです。
サイクル1：準備段階 (Preparation) 🚗
これは、新しい環境や役割が始まる前の「準備」の期間です。
- どんな時期？
- 次の仕事はどんなだろう？と期待を膨らませたり、自分にできるかな？と不安になったりする時期です。
- 会社の情報を集めたり、仕事の引継ぎをしたり、新しいスキルを勉強したりします。
- 例えるなら…
- 旅行の前に、ガイドブックを読んで計画を立てている時のワクワク・ドキドキ感に似ています。
サイクル2：遭遇段階 (Encounter) 😲
いよいよ新しい役割がスタートする「初対面」の時期です。
- どんな時期？
- 実際に仕事を始めてみて、「思っていたのと違う…！」と感じる「リアリティショック」が起こりやすい時期です。
- 新しい人間関係や仕事のルールに戸惑い、緊張やストレスを感じやすくなります。
- 例えるなら…
- 海外旅行で、空港に降り立った瞬間のカルチャーショックのような感覚です。
サイクル3：適応段階 (Adjustment) 🔧
新しい環境に自分を合わせていく「調整」の時期です。
- どんな時期？
- 仕事のやり方を覚えたり、自分なりに工夫したりして、少しずつ周囲に認められ始める時期です。
- 「遭遇段階」で感じたギャップを乗り越え、自分らしさを発揮しようと試行錯誤します。
- 例えるなら…
- 新しい家に引っ越して、家具の配置を決めたり、近所のお店を開拓したりして、自分の住みやすいようにカスタマイズしていく感じです。
サイクル4：安定段階 (Stabilization) ✨
すっかり新しい役割が板についた「定着」の時期です。
- どんな時期？
- 仕事にも慣れ、成果も出せるようになり、精神的にも安定します。
- しかし、この安定が長く続くと、人によっては「マンネリ」や「退屈」を感じ始め、次の変化を求める「準備段階」へとつながっていきます。
- 例えるなら…
- お気に入りのカフェの常連になって、店員さんとも顔なじみになり、リラックスして過ごせるようになった状態です。
転機サイクルが持つ「3つの特徴」
この4つのサイクルには、誰にでも当てはまる3つの面白い特徴があります。
① 普遍性 (Universality) 🌍
このサイクルは、誰にでも、どんな職種や役職でも起こるという特徴です。社長でも新入社員でも、転職でも部署異動でも、同じような心理プロセスをたどります。
② 循環性 (Cyclicality) 🔄
このサイクルは、一度きりではなく、何度も繰り返されるという特徴です。「安定段階」で落ち着くと、それがまた次の「準備段階」の始まりになる、というように、私たちのキャリアの中でグルグルと回り続けます。
③ 個人差 (Individual Differences) 🏃♀️💨…🐢
サイクルの進み方には、大きな個人差があるという特徴です。数ヶ月で安定段階に至る人もいれば、適応に何年もかかる人もいます。その人の性格や経験、周りのサポート体制など、様々な要因によってサイクルの長さや感じ方が変わってきます。
わかりやすく理解
キャリアの転機で誰もが経験する心理的なプロセスには、4つの段階があります。下のサイクル図の各段階をクリックして、詳細を確認してみましょう。
1. 準備段階
2. 遭遇段階
4. 安定段階
3. 適応段階
転機サイクルが持つ3つの特徴
この4段階のサイクルには、誰にでも当てはまる普遍的な特徴があります。
普遍性
役職や職種に関わらず、誰にでも起こる普遍的なプロセスです。社長も新入社員も同じ心理的段階を経験します。
循環性
一度きりではなく、キャリアの中で何度も繰り返されます。「安定」が次の「準備」の始まりとなります。
個人差
サイクルの進む速さには大きな個人差があります。性格、経験、周囲のサポートなどが影響します。
まとめ
このように、キャリアの転機には決まった心理的な流れがあります。もし今、あなたが新しい環境で戸惑いや不安を感じていたとしても、それは「遭遇段階」という自然なプロセスの一部です。このサイクルを理解することで、焦らず、着実に次のステップへ進むためのヒントが見つかるかもしれませんね。
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