キャリアコンサルタント実技試験(ロープレ)対策のポイント
キャリアコンサルタントの実技試験(ロープレ)は、単に「上手な会話」を評価する場ではありません。「相談者を主役(クライエント中心)として、信頼関係を築き、相談者が自らの力で問題に向き合えるように支援する」という基本的な姿勢とスキルが身についているかを確認する試験です。
以下に、ロープレの15分間と、その後の口頭試問で意識すべきことをまとめます。
1. ロープレ(15分間)で絶対に押さえるべき3つの態度(関係構築)
まず大前提として、以下の3つの態度を常に意識してください。これができていないと、どんなスキルを使っても評価されません。
- 受容的態度
- 相談者の話(内容、感情、価値観)を一切否定せず、「そうなんですね」「そのように感じていらっしゃるのですね」と、まずはありのまま受け止める姿勢です。
- 注意点: 心の中で「それは違うのでは?」と思っても、絶対に表情や言葉に出さないこと。
- 共感的理解
- 相談者の立場に立って、その気持ちを理解しようと努めることです。「私だったらどう感じるか」ではなく、「この人は今、どう感じているのか」を想像します。
- 具体的な行動: 感情の言葉を拾って返す。「(〜で)ご不安なのですね」「(〜ができて)嬉しいお気持ちなのですね」など。
- 自己一致(誠実な態度)
- わからないことはわからないと正直に伝える、見栄を張らない、誠実な態度です。カウンセラーとして真摯に相談者に向き合う姿勢が信頼感を生みます。
- 注意点: 知ったかぶりをしたり、無理に話を合わせたりしないこと。
2. ロープレの流れとスキル:4つのステップ
15分間を以下の4ステップで意識すると、時間配分もしやすくなります。
ステップ1:関係構築と問題の把握(〜5分)
- 目的: 相談者が安心して話せる場を作り、相談者が「何を話したいのか」を掴む。
- 主なスキル:
- 傾聴: うなずき、あいづち、アイコンタクトを適切に行い、「あなたの話をしっかり聴いています」というメッセージを伝える。
- 開かれた質問: 「はい/いいえ」で終わらない質問。「〜について、もう少し詳しく教えていただけますか?」「その時、どのように感じましたか?」など。
- 繰り返し(伝え返し): 相談者の言葉をそのまま繰り返すことで、理解していることを示す。「〜だったのですね」
ステップ2:問題の核心への展開(5分〜12分)
- 目的: 相談者が最初に話した「主訴」の背景にある、本当の課題や気持ちに焦点を当てる。相談者自身に「気づき」を促す。
- 主なスキル:
- 感情の反映: 相談者の言葉の裏にある感情を汲み取って伝える。「それは、とても悔しいお気持ちだったのですね」
- 要約: 話が一段落したところで、「ここまでの話をまとめると、〜ということでしょうか?」と確認し、認識のズレを防ぐ。
- 問いかけ: 相談者の自己探索を促す質問。「ご自身では、その原因はどこにあると思われますか?」「理想の働き方とは、どのようなものでしょうか?」
ステップ3:具体的な展開(目標設定)(12分〜15分)
- 目的: 相談者が「次に何をすべきか」を自ら考え、行動に移せるように支援する。
- 主なスキル:
- 目標の明確化: 「今日のこの時間で、何がどうなったら良いと思いますか?」と問いかけ、相談者自身にゴールを意識させる。
- 行動への橋渡し: 「まず、何から始められそうですか?」「次回までに、何か試してみたいことはありますか?」と、小さな一歩を一緒に考える。
- 重要: ここで解決策を提示したり、アドバイスしたりするのはNGです。 あくまで相談者が自分で決めるプロセスを支援します。
ステップ4:クロージング(時間内での区切り)
- 目的: 15分という時間内で面談を安全に一旦終了させる。問題を解決するのではなく、相談者が安心して「続きはまた次回」と思えるように区切る。
- 具体的な関わり方:
- 要約と振り返り: 「〇〇さん、今日は〜というお気持ちについてお話しいただき、ありがとうございました。」と、相談者が話した中心的な感情や内容を簡潔に伝える。
- 気持ちの確認: 「ここまでお話しされてみて、今のお気持ちはいかがですか?」と問いかけ、現在の心境を確認する。
- 次への橋渡し: 「もしよろしければ、この続きをまた次回、お聞かせいただけますか」と、面談が継続するものであることを伝え、安心感を持ってもらう。
- 注意点: 無理に話をまとめたり、結論を出そうとしたりしないこと。あくまで「15分の面談の区切り」という意識を持つ。
3. 「どうできれば受かるか?」合格の基準
完璧なカウンセリングを目指す必要はありません。以下の点が評価者に伝われば、合格は見えてきます。
- 【最重要】相談者が主役であったか?
- カウンセラーがたくさん話すのではなく、相談者が7〜8割話している状態が理想。
- カウンセラーの価値観や意見を押し付けていないか。
- 信頼関係(ラポール)が築けていたか?
- 相談者が安心して、少しずつでも自己開示できていたか。
- 非言語的な態度(表情、姿勢)も温かく、受容的であったか。
- 相談者の「自己探索」を支援できていたか?
- 相談者が、話すことを通じて自分の気持ちや考えを整理できている様子が見られたか。
- たとえ小さなことでも、相談者に何らかの「気づき」があったか。
- 「キャリアコンサルタントに相談してよかった」と思える関わりだったか?
- 評価者は、「この人に自分の部下や家族の相談を任せられるか?」という視点で見ています。安心感、安定感、誠実さが伝わることが合格の鍵です。
4. よくある不合格パターン(やってはいけないこと)
- 質問攻めにする: 情報を得ようと焦り、矢継ぎ早に質問してしまう。
- すぐにアドバイス・提案をする: 相談者の話を十分に聴かずに、「〜した方がいいですよ」と解決策を提示してしまう。
- カウンセラーが問題を特定し、誘導する: 「あなたの問題は〜ですね」と決めつけ、その方向へ話を進めようとする。
- 沈黙を恐れる: 相談者が考えている「間」を待てず、すぐに言葉を挟んでしまう。
5. 口頭試問のポイント
ロープレ後には、自身の面談を振り返る口頭試問があります。ここも重要な採点ポイントです。
- できた点・できなかった点を客観的に答える。
- 「傾聴の姿勢は意識できましたが、感情の反映が不十分でした」など具体的に。
- なぜその質問をしたのか、意図を説明できるようにする。
- 「〇〇という発言から△△というお気持ちがあるのではないかと考え、自己探索を促すために〜と質問しました」
- 相談者の問題をどう捉えたか、今後の支援方針を述べる。
- 「主訴は〜でしたが、真の課題は〇〇だと考えます。今後は△△という点に焦点を当てて支援を進めたいです」
自信を持って、誠実に答えましょう。完璧でなかったとしても、真摯に振り返る姿勢が評価されます。
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