キャリアコンサルタントとして、求職者の方々の「学びたい」「スキルアップして再就職したい」という気持ちに寄り添うことは非常に重要です。その代表的な支援策が「ハロートレーニング(公的職業訓練)」です。試験では、その制度内容が正確に問われます。一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
1. ハロートレーニングって何?(基本のキ)
「ハロートレーニング」とは、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識を、原則無料(※テキスト代などは自己負担)で学ぶことができる公的な制度の愛称です。
- 目的: 働く意欲のある方が、スキルを身につけて、より良い条件で就職できるように支援すること。
- 根拠法: 職業能力開発促進法 が基本となります。(※ただし後述する求職者支援訓練は別の法律が関わります)
- 相談・申込窓口: 原則として、お住まいの地域を管轄するハローワークです。
キャリアコンサルタントとしては、この制度が求職者にとって大きな希望となり得ることを理解し、適切な情報提供ができるようになることが求められます。
2. 誰が対象?ハロートレーニングの主な種類
ハロートレーニングは、対象者によって大きく2つに分かれます。ここが試験で最も狙われやすいポイントです!
| 種類 | 主な対象者 | ポイント |
| 公共職業訓練(離職者訓練) | 雇用保険を受給している方 | 雇用保険の延長給付の対象になることがある |
| 求職者支援訓練 | 雇用保険を受給できない方 | 「職業訓練受講給付金」で生活支援を受けられる |
この2つの違いを、さらに詳しく見ていきましょう。
① 公共職業訓練(主に雇用保険をもらっている方向け)
失業手当(基本手当)を受けながら、再就職のためのスキルを学ぶ訓練です。
- 実施主体: 国(ポリテクセンター)や都道府県(高等技術専門校など)
- 訓練内容: ものづくり分野(機械、建築など)から事務、IT、介護など幅広いコースがあります。
- 訓練期間: 3ヶ月〜1年が中心(長いもので2年)。
- ★重要ポイント:
- ハローワークの受講指示を受けて訓練に参加すると、訓練が終了する日まで基本手当の給付が延長されることがあります(所定給付日数が残り少ない場合など)。これを訓練延長給付と言います。
- 受講中、基本手当とは別に通所手当(交通費)や受講手当(日当のようなもの)が支給されます。
② 求職者支援訓練(主に雇用保険をもらえない方向け)
雇用保険の適用がなかった離職者の方、フリーランスや自営業を廃業した方、これまで働いた経験の少ない主婦の方などが対象です。まさに雇用のセーフティネットの役割を担っています。
- 根拠法: 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(求職者支援法)
- 実施主体: 厚生労働大臣が認定した民間の教育訓練機関(専門学校やパソコンスクールなど)
- 訓練内容: 社会人としての基礎を学ぶ「基礎コース」と、より実践的なスキルを学ぶ「実践コース」があります。IT、医療事務、WEBデザイン、介護などが人気です。
- 訓練期間: 2ヶ月~6ヶ月の短期間のコースが中心です。
★★★最重要!職業訓練受講給付金★★★
求職者支援訓練の最大のポイントは、一定の要件を満たすと、訓練期間中に月10万円の「職業訓練受講給付金」と通所手当が支給される点です。この要件は数字も含めて暗記しましょう!
<職業訓練受講給付金の主な支給要件>
- 本人収入: 月8万円以下
- 世帯全体の収入: 月25万円以下(令和4年4月から30万円以下に緩和されているが、試験では原則の25万円が問われる可能性あり)
- 世帯全体の金融資産: 300万円以下
- 居住状況: 現在住んでいる所以外に土地・建物を所有していない
- 出席要件: 訓練実施日の全てに出席すること(やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間ごとに8割以上の出席が必要)
- 世帯の中に同時にこの給付金を受給している者がいないこと
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けていないこと
キャリアコンサルタントは、相談者がこの給付金を受けられる可能性があるか、ライフプランも考慮しながら一緒に確認していく役割を担います。
3. 混同注意!「教育訓練給付制度」との違い
ハロートレーニングとよく似た制度に「教育訓練給付制度」があります。試験では、この2つを混同させる問題がよく出ます。違いを明確にしましょう。
| ハロートレーニング | 教育訓練給付制度 | |
| 目的 | 求職者の再就職支援 | 働く人の主体的な能力開発支援(キャリアアップ、雇用の安定) |
| 費用 | 原則無料(テキスト代等のみ自己負担) | 有料(受講後に費用の一部が支給される) |
| 対象講座 | 国や都道府県が設置、または国が認定した訓練コース | 厚生労働大臣が指定した講座 |
| 利用の流れ | ハローワークに相談・申込 → 選考 → 受講 | 自分で講座を選んで申込 → 受講・修了 → ハローワークに申請 → 給付金受給 |
教育訓練給付制度の3つの種類
この制度には、給付率や対象講座によって3つのレベルがあります。
- 専門実践教育訓練
- 看護師、美容師、保育士、キャリアコンサルタントなどの専門性の高い資格や、デジタル分野の講座が対象。
- **受講費用の最大70%**が支給される、最も手厚い支援。
- ★★最重要ポイント★★: この給付金を利用するには、受講開始前にキャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成することが必須です。
- 特定一般教育訓練
- 税理士、社労士などの資格取得や、デジタルスキルの習得など、速やかな再就職やキャリアアップに繋がる講座が対象。
- 受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。
- 一般教育訓練
- 英語、簿記、PCスキルなど、幅広い講座が対象。
- 受講費用の20%(上限10万円)が支給されます。
4. 試験対策まとめ!ここだけは押さえよう!
- 公共職業訓練 vs 求職者支援訓練: 「対象者」「根拠法」「給付金(手当)」の違いを明確に!
- 職業訓練受講給付金の要件: 「収入月8万以下」「世帯収入月25万以下」「資産300万以下」の3つの数字は必ず覚える!
- ハロトレ vs 教育訓練給付: 「無料 vs 有料(後から給付)」「求職者支援 vs 在職者等の能力開発」という目的の違いを理解する!
- 専門実践教育訓練とキャリコン: 受給には訓練前キャリアコンサルティングとジョブ・カードが必須であることを絶対に忘れない!
- 相談窓口: どちらの制度もハローワークが主な窓口であることは共通しています。
これらの制度は、相談者の人生の転機を支えるための強力なツールです。キャリアコンサルタントとして、正確な知識を身につけ、一人ひとりの状況に合った最適な情報を提供できるよう、頑張って学習を進めていきましょう!


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