ここでは、頻出理論家の一人であるウィリアム・ブリッジズの「トランジション理論」について、試験で問われやすいポイントに絞って分かりやすく解説します。
目次
概要
最重要ポイント:「変化」と「トランジション」は違う!
変化 (Change)
外面的な「出来事」
- 状況的なもので、目に見えやすい
- 例:転職、昇進、異動、失業、結婚
トランジション (Transition)
内面的な「心理的プロセス」
- 変化に適応していくための心の動き
- 目に見えにくく、時間がかかる
【試験対策】
キャリアコンサルタントは、相談者の外面的な「変化」だけでなく、その裏にある内面的な「トランジション」のプロセスを捉える視点が重要です。
トランジションの3つの段階
第1段階
何かが終わる
「手放し」と「喪失」の時期
これまでの役割やアイデンティティを失い、喪失感や不安、混乱といった感情が支配的になります。
キャリアコンサルタントの支援
- 喪失感やネガティブな感情を受容・傾聴する。
- 何を失ったのか言語化を支援する。
- 無理に次を急かさず「終わらせる」ことの重要性を伝える。
第2段階
ニュートラル・ゾーン
「混沌」と「内省」の時期
古いものと新しいものの狭間で宙ぶらりんに。不安な一方、新しい創造性が生まれる重要な時期です。
キャリアコンサルタントの支援
- この混乱期が「意味のある時間」だと伝える。
- 自己理解を深めるための内省を促す。
- プロセスそのものに寄り添う姿勢が求められる。
第3段階
何かが始まる
「新しい目的」と「エネルギー」の時期
新しい目的や役割が見つかり、新しい方向へ向かうエネルギーが湧いてきます。
キャリアコンサルタントの支援
- 新しいビジョンや目標の具体化を支援する。
- 行動計画の作成をサポートする。
- 新しい始まりを祝福し、エンパワーメントする。
解説
1.最重要ポイント:「変化」と「トランジション」は違う!
ブリッジズの理論を理解する上で最も重要なのが、「変化(Change)」と「トランジション(Transition)」を明確に区別することです。
- 変化(Change)
- 外面的な出来事そのものを指します。
- 状況的なもので、目に見えやすいです。
- 例:転職、昇進、異動、失業、結婚、引越しなど。
- トランジション(Transition)
- その「変化」を経験したことによる、内面的な心理的プロセスを指します。
- 人が変化に適応していくために、内面で何を手放し、何を学び、どう新しい自分になっていくか、という心の動きです。
- 目に見えにくく、時間がかかります。
【試験対策】
相談者が「転職した(変化)」という事実だけでなく、その過程でどのような「心の動き(トランジション)」を経験しているのかを捉えることが、キャリアコンサルタントの役割である、という視点を持ちましょう。
2.トランジションの3つの段階
トランジションは、一直線に進むものではなく、以下の3つの段階を経て進んでいくとされています。この3段階は必ず覚えましょう。
第1段階:何かが終わる(Ending)
- どんな時期?
- これまでの役割、アイデンティティ、人間関係などを**「手放す」**時期です。
- 喪失感、抵抗、不安、怒り、混乱といった感情が支配的になります。
- キャリアコンサルタントの支援ポイント
- まずは、喪失感やネガティブな感情を受容・傾聴することが重要です。
- 何が終わり、何を失ったのかを相談者自身が認識できるよう、言語化を支援します。
- 無理に次のステップを急かさず、「終わらせること」の重要性を伝えます。
第2段階:ニュートラル・ゾーン(The Neutral Zone)
- どんな時期?
- 古いものが終わり、新しいものがまだ始まっていない、宙ぶらりんで混沌とした時期です。「中立地帯」とも訳されます。
- 方向性が見えず、不安や焦りを感じやすい一方、内省が深まり、新しい可能性や創造性が生まれる重要な時期でもあります。
- キャリアコンサルタントの支援ポイント
- この混乱期が**「意味のある大切な時間」**であることを伝え、相談者の不安を和らげます。
- 自己理解を深めるための内省を促し(価値観の再確認、興味の探求など)、焦らずに自分と向き合える場と時間を提供します。
- すぐに答えを出そうとせず、プロセスそのものに寄り添う姿勢が求められます。
第3段階:何かが始まる(The New Beginning)
- どんな時期?
- 新しい目的や役割、アイデンティティが見つかり、新しい方向に向かって心理的なエネルギーが湧いてくる時期です。
- 具体的な目標を設定し、一歩を踏み出します。
- キャリアコンサルタントの支援ポイント
- 新しいビジョンや目標を具体化できるよう支援します。
- **行動計画(アクションプラン)**の作成をサポートし、小さな成功体験を積めるよう後押しします。
- 新しい始まりを祝福し、エンパワーメントします。
3.まとめ(試験で思い出すためのキーワード)
| 概念/段階 | キーワード | 相談者の感情 | キャリコンの支援 |
| 変化とトランジション | 外的な出来事(変化)と内的なプロセス(トランジション)の区別 | – | 出来事の裏にある心の動きを捉える |
| 第1段階:終わり | 手放し、終焉、喪失 | 喪失感、不安、抵抗 | 傾聴、受容、言語化支援 |
| 第2段階:ニュートラル・ゾーン | 混沌、宙ぶらりん、内省 | 混乱、焦り、創造性 | 混乱の意味づけ、自己探求の支援 |
| 第3段階:始まり | 新しい目的、エネルギー | 希望、意欲 | 具体化、行動計画、エンパワーメント |
ブリッジズの理論は、相談者が今どの心理的段階にいるのかを見立て、その段階に合った適切な支援を行うための強力なフレームワークになります。頑張ってください!

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