チャチャシャイン先生は、キャリアコンサルタント試験の再頻出理論家の1人。でもいろいろな理論があって覚えられないよー



組織と個人の相互作用を解いたシャイン先生。まずはサクッと概要から攻めよう!
・外的キャリア・内的キャリア
・キャリコーン
・キャリアアンカー
・キャリアサイクル
・キャリア・サバイバル
「組織心理学」を生んだシャイン先生


エドガー・ヘンリー・シャインは1928年生まれ。陸軍の研究所で洗脳研究を行った後マサチューセッツ工科大学に移り、組織開発やキャリア開発、組織文化の分野で活躍しました。



2023年に亡くなられましたが、たくさんのキャリア理論を産み出した先生です
エドガー・シャインは、組織心理学、キャリア開発の分野で非常に重要な理論を提唱しており、キャリアコンサルタント国家試験においても頻出の人物です。シャインの理論は、個人のキャリアを内面から深く理解するための強力なフレームワークを提供します。
今回は、試験で特に問われやすい「キャリア・アンカー」「キャリア・サイクル」「外的キャリアと内的キャリア」を中心に、過去の出題傾向も踏まえて分かりやすく解説します。
1. 最重要理論:キャリア・アンカー



シャインの理論の中でも、最も出題頻度が高いのが「キャリア・アンカー」です。



必ず押さえておきましょう。
キャリア・アンカーとは?
キャリア・アンカーとは、個人がキャリアを選択する際に、最も大切にし、最も犠牲にしたくない価値観や欲求のことです。一度形成されると、まるで船の錨(アンカー)のように、その人のキャリアを一定の方向に繋ぎ止め、安定させる役割を果たします。
【ポイント】
- 3つの要素から構成される:
- コンピタンス: 自分が得意だと認識している能力
- 動機: 自分が本当にやりたいこと
- 価値観: 何を重要とし、何をすべきでないと感じるか
- 実際の経験を通じて、自己理解が深まることで形成されます。
- シャインは、このキャリア・アンカーを以下の8つのタイプに分類しました。
8つのキャリア・アンカー
エドガー・シャインの「キャリアアンカー」
キャリアアンカーとは、組織心理学者エドガー・シャイン博士が提唱した、個人のキャリアを形成する上で最も大切にする価値観や欲求のことです。これだけは譲れないという「軸」となるもので、まるで船の錨(アンカー)のように、キャリアの方向性を定める役割を果たします。下の8つのタイプから気になるものを選択し、ご自身のキャリアの軸を探ってみましょう。
このタイプの人の特徴
向いている職務・役割の例
【試験での問われ方】
- 選択問題: 各アンカーの名称と内容の組み合わせを問う問題。
- 事例問題: 事例の人物がどのキャリア・アンカーを最も重視しているかを読み解く問題。
2. キャリア・サイクル(キャリア発達段階)
シャインは、人が生涯を通じて経験するキャリアの段階を「キャリア・サイクル」としてモデル化しました。スーパーの理論と比較して問われることもあります。
【ポイント】
- シャインのモデルは、特に組織内でのキャリアに焦点を当てている点が特徴です。
- 個人の発達、家族関係、キャリアの3つのサイクルが相互に影響し合うと考えます。
キャリアの9段階
- 成長・空想・探求(0~21歳): キャリアについての空想や探求を行う時期。
- 仕事の世界へのエントリー(16~25歳): 初めて組織に入り、現実を学ぶ時期。
- 基本訓練(16~25歳): 組織のメンバーとして必要なスキルや態度を学ぶ。
- キャリア初期(17~30歳): 責任ある仕事を与えられ、専門性を深める時期。
- キャリア中期(25歳~): 専門分野が確立し、重要な役割を担う。この時期にキャリア・アンカーが明確になることが多い。
- キャリア中期の危機(35~45歳): これまでのキャリアを見直し、将来について問い直す時期。
- キャリア後期(40歳~引退): 組織の中心人物として貢献し、後進の指導にもあたる。
- 衰えと離脱(40歳~引退): 徐々に仕事の中心から離れ、引退への準備を始める。
- 引退(引退後): 職業人としての役割を終える。
キャリアの9段階についてもっと詳しく
キャリアの9段階(エドガー・シャインのモデルに基づく解説)
1. 成長・空想・探求(0~21歳)
- 概要: 職業的な自己概念が形成され始める時期です。
- 詳細:
- 成長: 家庭や学校生活を通じて、自分の興味、能力、価値観の基礎が作られます。
- 空想: 幼少期には、職業について現実的ではない空想的なイメージを抱きます(例:ヒーロー、お姫様)。
- 探求: 青年期に入ると、様々な職業の情報を集め、自分の適性や可能性を探り始めます。アルバイトなどを通じて、働くことの断片的な経験をすることもあります。
2. 仕事の世界へのエントリー(16~25歳)
- 概要: 労働市場に入り、初めての就職活動と組織選択を行う時期です。
- 詳細:
- 組織の情報を収集し、自分の能力や価値観に合うかどうかを評価します。
- 就職活動、面接、内定といったプロセスを経て、特定の組織の一員となります。
- この時期の大きな課題は、学生時代の理想と、組織の現実とのギャップ(リアリティ・ショック)を乗り越えることです。
3. 基本訓練(16~25歳)
- 概要: 組織の「見習い」として、基本的なスキルや規範を学ぶ時期です。「エントリー」とほぼ同時期に始まります。
- 詳細:
- 組織のルール、文化、人間関係、仕事の基本的な進め方を学びます。
- 上司や先輩(メンター)からの指導を受け入れ、組織のメンバーとして受け入れられることを目指します。
- 「自分はここでやっていけるだろうか」という不安と向き合いながら、組織への適応を図ります。
4. キャリア初期(17~30歳)
- 概要: 基本訓練を終え、責任ある本格的な仕事を任される時期です。
- 詳細:
- 最初の重要な仕事やプロジェクトを担当し、自分の能力を試す機会が与えられます。
- 成功体験を通じて自信を深め、専門性を高めていきます。
- 組織内で「一人前」として認められ、自分の居場所を確立しようとします。
5. キャリア中期(25歳~)
- 概要: 組織の正式なメンバーとして認められ、専門分野が確立し、重要な役割を担う時期です。
- 詳細:
- 専門家として、または管理職として、組織の中核的な機能を担います。
- この時期に、シャインが提唱したもう一つの重要な概念である「キャリア・アンカー」が明確になります。
- 専門・職能別: 自分の専門分野やスキルを高めることに価値を置く。
- 全般管理: 組織全体を動かし、経営や管理職としての責任を担うことに価値を置く。
- 自律・独立: 自分のやり方で仕事を進め、組織のルールに縛られないことを望む。
- 保障・安定: 経済的な安定や雇用の保障を最優先する。
- 起業家的創造性: 新しいもの(事業、製品、サービス)を生み出すことに情熱を燃やす。
- 奉仕・社会貢献: 社会を良くすることや、他人の役に立つことに価値を置く。
- 純粋な挑戦: 困難な課題や難問の解決に挑戦すること自体に喜びを感じる。
- 生活様式 (ワークライフバランス): 仕事と私生活(家族、趣味など)の調和・統合を重視する。
6. キャリア中期の危機(35~45歳)
- 概要: これまでのキャリアを振り返り、「本当にこのままで良いのか」と将来について問い直す時期です。
- 詳細:
- 昇進の停滞(キャリア・プラトー)を感じたり、仕事への情熱が薄れたりすることがあります。
- 自分のキャリア・アンカーと現在の仕事が一致していない場合、強い葛藤を感じやすくなります。
- 「人生の折り返し地点」を意識し、転職、独立、異動、あるいは現状を受け入れて新たな意味を見出すなど、大きな見直しや再選択を迫られることがあります。
7. キャリア後期(40歳~引退)
- 概要: 豊富な経験と専門性を活かし、組織の中心人物として貢献する時期です。
- 詳細:
- 組織の重要な意思決定に関わったり、難しい問題の解決にあたったりします。
- この時期の重要な役割の一つが、**後進の指導・育成(メンタリング)**です。自分の知識や経験、価値観を次の世代に伝承する役割を担います。
8. 衰えと離脱(40歳~引退)
- 概要: キャリア後期と並行しつつ、徐々に仕事の中心から離れ、引退への準備を始める時期です。
- 詳細:
- 第一線での責任や権限を徐々に後進へ移譲していきます。
- 体力的な衰えや、新しい技術・価値観への対応の変化を受け入れる必要があります。
- 組織内での役割が変化していくことへの心理的な適応(アイデンティティの再構築)が課題となります。
9. 引退(引退後)
- 概要: 組織を離れ、職業人としての主要な役割を終える時期です。
- 詳細:
- 「会社員」「専門家」といった職業上のアイデンティティから離れます。
- 地域活動、趣味、家族との時間、ボランティアなど、仕事以外での新たな役割や生きがいを見つけることが、この時期の重要な課題となります。
現代における留意点
シャインのこのモデルは、比較的安定した組織(終身雇用など)を前提として構築されました。
現代は、転職、副業、フリーランス、起業、学び直し(リスキリング)などが一般的になり、キャリアのあり方が非常に多様化しています。そのため、全ての人がこの9段階を直線的に進むわけではありません。
しかし、組織に入って適応し、中核となり、やがて離れていくという**「組織と個人の関係性の変化」のプロセス**、あるいはキャリアの途中で**「自分にとって本当に大切なもの(キャリア・アンカー)は何か」を問い直す**という視点は、現代においてもキャリアを考える上で非常に有用な枠組みと言えます。
3. 外的キャリアと内的キャリア
シャインは、キャリアを2つの側面から捉えることの重要性を説きました。
- 外的キャリア (External Career):
- 客観的で目に見えるキャリアのこと。
- 例: 役職、地位、給与、経歴、資格など。
- 他者から評価される側面が強い。
- 内的キャリア (Internal Career):
- 主観的で内面的なキャリアのこと。
- 例: 仕事に対するやりがい、価値観、動機、満足感、自己認識など。
- 本人がキャリアをどう意味づけているか。
- キャリア・アンカーは、この内的キャリアの中核をなす概念です。
【ポイント】 試験では、この2つの概念の対比が問われます。「内的キャリアとは何か」を説明させたり、事例の記述がどちらに当てはまるかを判断させたりする問題が考えられます。
4.キャリア・コーン(組織の三次元モデル)
キャリア・コーンは、組織内での個人の位置や移動の方向性を以下の3つの次元で示します。
1. 垂直方向(階層・地位)
- 動き: 円錐の底面から頂点へ向かう昇進(または降格)。
- 意味: 組織内での職位や職階の移動を表します(例:係長 $\rightarrow$ 課長 $\rightarrow$ 部長)。責任、権限、報酬の増大を伴う、最も一般的に認識されるキャリアアップです。
2. 水平方向(職能・機能)
- 動き: 円錐の円周に沿った移動。
- 意味: 職能部門や専門分野の移動を表します(例:営業部 $\rightarrow$ 人事部 $\rightarrow$ 企画部)。異なる職務や専門性を経験するジョブ・ローテーションなどがこれにあたります。
3. 中心方向(中心性・部内者化)
- 動き: 円錐の円周から中心(軸)に向かう移動。
- 意味: 組織の中核により近づき、組織の規範、価値観、文化を深く理解し、影響力を持つ中心的なメンバーになっていくことを表します。特定の専門分野における中心人物となったり、組織の意思決定への関与度が高まったりする状態です。
キャリア・コーンは、単なる昇進(垂直方向)だけでなく、職務経験の幅の拡大(水平方向)や組織の中心への関与(中心方向)もまた、組織内キャリアの発達において重要であることを視覚的に示しています。
このモデルは、個人のキャリア・アンカー(内的キャリア)と関連付けて、組織が個人に多様な経験を提供し、多面的なキャリア発達を支援するためのツールとしても用いられます。
過去問の傾向と学習のポイント
- 最優先はキャリア・アンカー: 8つのアンカーの名称と意味を正確に覚えることが基本です。特に「全般管理能力」「奉仕・社会貢献」「生活様式」などは、他の理論家があまり使わない言葉なので特徴的です。
- 概念の関連性を理解する: 「キャリア・アンカーは内的キャリアの中核をなす」というように、各概念がどう繋がっているのかを理解しておくと、応用問題に対応しやすくなります。
- 事例問題に慣れる: 「〇〇という価値観を持つAさんにとって、最も重要と考えられるキャリア・アンカーは何か」といった事例問題が頻出です。各アンカーを持つ人物像を具体的にイメージしながら学習を進めましょう。
- 他の理論家との比較: 特にキャリア発達段階については、スーパーの理論との違い(例: シャインは組織内キャリアに重点)を意識しておくと、知識が整理しやすくなります。
シャインの理論は、クライエントの主観的なキャリア(内的キャリア)を理解し、本当に大切にしたいものは何かを一緒に探求していく上で、非常に実践的なツールとなります。試験対策としてだけでなく、実務でも役立つ知識として、しっかりとマスターしておきましょう。
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キャリアアンカーとは?
キャリアアンカーとは、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン博士が提唱した概念です。キャリアを選択する上で、どうしても譲ることができない個人の価値観や欲求、能力の自己イメージを指します。船が錨(アンカー)を下ろして安定するように、キャリアの様々な場面で意思決定の「軸」となるものです。
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