
国家資格キャリアコンサルタント試験の再頻出の理論家はだーれだ。



それはスーパー先生だね
キャリアコンサルタント試験再頻出の理論家スーパー先生。たくさんの理論を発表しています。
まずはスーパー先生の理論をサクッと理解し、問題演習で力をつけていきましょう。
キャリア界のスーパーヒーロー ドナルド・スーパー


ドナルド・スーパー(1910~1994)は、一言でいうと「『仕事だけが人生じゃない!』を70年以上も前に見抜いていた、時代の先を行く理論家」です。
多くの人が「キャリア=仕事」と考えていた時代に、「いやいや、人の一生は仕事だけじゃないでしょ!趣味や家庭、学びも全部ひっくるめてその人のキャリアなんだよ」と提唱しました。まさに、現代のワークライフバランスの考え方を先取りしていた人物なのです。
キャリア理論をサクッと理解
スーパーの理論は非常に多岐にわたりますが、たった一つ、中心となる考え方があります。それは、
「キャリアとは、生涯を通じて自己概念(自分とは何者か)を探求し、表現していくプロセスである」
というものです。 これから学ぶ「ライフステージ」や「ライフキャリアレインボー」などの概念は、すべてこの「自己概念」という心臓部を説明するためのパーツだと考えてください。
講義の前に:ドナルド・スーパーってどんな人?
ドナルド・スーパー(1910-1994)は、キャリア発達理論の分野で最も影響力のある研究者の一人です。彼の理論がなぜ多くの人に受け入れられているのか、その人柄から見ていきましょう。
- 「心ある理論家」: スーパーの理論は、人の生涯を温かいまなざしで捉えていることから「心ある理論(Theory with a heart)」と呼ばれます。これは、彼が個人の多様な生き方や感情を尊重し、単なるデータではなく、一人ひとりの「物語」を大切にしたからです。
- 父の影響: 彼の父親もキャリア指導の専門家でした。幼い頃からキャリアというテーマが身近にあり、それが彼の生涯の研究テーマへと繋がりました。
- 自らの理論を体現: スーパーは自身の理論を更新し続け、70歳を超えても精力的に活動しました。まさに彼自身が「キャリアは生涯発達する」という自らの理論を体現していたと言えます。
- カウンセラーとしての視点: 彼は研究者であると同時に、優れたカウンセラーでもありました。机上の空論ではなく、常に現場のクライエントと向き合う視点を持っていたことが、彼の理論に深みと実用性を与えています。
このような彼の人間性が、人の一生という複雑なものを、ライフキャリアレインボーのような美しく、分かりやすいモデルで表現させたのかもしれません。では、各パーツを詳しく見ていきましょう。
1. キャリア自己概念(Vocational Self-Concept)
これが理論の核です。試験でも最も重要視されます。
自己概念とは?
簡単に言えば**「自分はどんな人間か」という自己イメージ**のことです。 「私は人と話すのが得意だ」「コツコツ作業するのが好きだ」「新しいことに挑戦したい」といった、自分の能力、興味、価値観、性格などについての認識が組み合わさってできています。
自己概念が形成され、キャリアになるまで
スーパーは、自己概念がキャリアとして形になるまでを、以下のプロセスで説明しました。家を建てるプロセスに例えると分かりやすいです。
- 形成 (Formation)
- 経験を通じて「自分はこういう人間かも?」というイメージが作られる時期。
- (例:家の設計図を描く段階。「こんな家に住みたい」とイメージする)
- 子どもの頃、プラモデル作りが得意で「自分は手先が器用だ」と感じる。
- 翻訳 (Translation)
- 形成された自己概念を、特定の職業イメージに結びつける時期。
- (例:設計図をもとに、具体的な職業「大工さん」や「建築家」を考える)
- 「手先が器用」という自己概念を「歯科技工士や宝飾職人なら向いているかも」と考える。
- 実現 (Implementation)
- 実際にその職業に就くための行動(就職、訓練など)を起こす時期。
- (例:建築家になるために大学で学び、設計事務所に就職する)
- 歯科技工士の専門学校に通い、資格を取って歯科技工所へ就職する。
- 維持・発展 (Maintenance)
- 就職後、その仕事で自己概念を表現し続け、経験を積んでさらに発展させる時期。
- (例:設計士として経験を積み、自分のスタイルを確立する)
- 歯科技工士として働き、技術を磨きながら「やはりこの仕事は自分に合っている」と確信する。
【試験のポイント】 キャリアコンサルタントの役割は、クライエントが自分自身の「自己概念」に気づき、それを言語化し、具体的な職業へと「翻訳・実現」するのを支援することです。この視点を忘れないでください。
2. ライフステージ(Life Stages)
スーパーは、人の一生をキャリア発達の観点から5つのステージに分けました。これをマキシ・サイクルと呼びます。
ステージ | 年齢(目安) | 主要な発達課題 | 具体例 |
---|---|---|---|
1. 成長段階 (Growth) | 0~14歳 | 自己概念の形成。空想や興味を通じて仕事の世界を知る。 | 「お医者さんになりたい」「ゲームを作る人になりたい」と夢見る。 |
2. 探索段階 (Exploration) | 15~24歳 | 職業の可能性を試し、暫定的な職業選択をする。 | アルバイト、インターンシップ、学校での専攻選択などを通じて自己理解を深める。 |
3. 確立段階 (Establishment) | 25~44歳 | 特定の職業分野で地位を確立し、安定させようと努力する。 | 就職した会社でスキルを磨き、昇進を目指す。専門性を高める。 |
4. 維持段階 (Maintenance) | 45~64歳 | 築き上げた地位や専門性を維持し、後進の指導なども行う。 | ベテランとして職場での地位を保つ。新しい技術を学び直し、変化に対応する。 |
5. 解放段階 (Disengagement) | 65歳~ | 仕事からの引退。新しい役割や活動を見つける。 | 定年退職し、趣味や地域活動、ボランティアなどに時間を費やす。 |
【試験のポイント】
- ミニ・サイクル: キャリアチェンジ(転職や異動)が起きた時、人はこの5段階を短いサイクルで再び経験するとされています。例えば、40歳で会社員から農家に転職した場合、農家としての「探索」→「確立」→「維持」を新たに経験します。このミニ・サイクルの概念は非常によく出題されます。
- 年齢はあくまで目安であり、個人差があることを理解しておくことが重要です。
3. ライフキャリアレインボー(Life-Career Rainbow)
スーパーの理論を視覚的に最も美しく表現したモデルです。人の生涯(ライフスパン)と、その時々で担う役割(ライフスペース)を虹に例えています。
2つの次元
- ライフスパン(Life Span)- 横軸
- 人生の時間を表し、「成長」から「解放」までのライフステージを示します。人生という舞台の時間軸です。
- ライフスペース(Life Space)- 縦軸(虹の太さ)
- 人が同時に演じている様々な**役割(ロール)**を示します。人生という舞台で演じる役柄です。役割が大きければ、その虹の帯は太くなります。
主要なライフロール
スーパーは主に以下の役割を挙げました。
- 子ども: 親との関係における役割。
- 学生: 学ぶ役割。
- 余暇を楽しむ人 (Leisurite): 趣味や娯楽を楽しむ役割。
- 市民 (Citizen): 地域社会やボランティアなどに関わる役割。
- 労働者 (Worker): 職業人としての役割。
- 配偶者: パートナーとの関係における役割。
- 家庭人 (Homemaker): 家庭を維持する役割。
- 親 (Parent): 子を育てる役割。
【試験のポイント】
- キャリアは「職業」だけではない: スーパーは、これらの役割(ロール)すべてを統合したものがその人の「キャリア」であると考えました。これをキャリアの多元性と呼びます。
- 役割の相互作用: ある役割(例:親)に多くの時間とエネルギーを注ぐと、別の役割(例:労働者)の時間は減る、というように役割同士は影響し合います。キャリア相談では、クライエントが「労働者」としての役割だけでなく、他の役割とのバランスに悩んでいるケースが非常に多いです。このレインボーの視点は、クライエントの悩みを多角的に理解するために不可欠です。
4. アーチモデル(Archway Model)
ライフキャリアレインボーで描かれたキャリアが、「何によって」形作られるのかを説明したモデルです。自己概念を支える要因を図式化しています。
建物のアーチを想像してください。
- 左の柱:個人の要因(内的要因)
- その人自身の内側にあるものです。
- ニーズ(欲求)、価値観、興味、知性、適性などが含まれます。
- これらの個人的要因は、ご指摘の通り「諸能力」と「パーソナリティ」に分けて考えると、より理解が深まります。
区分 | 具体例 |
---|---|
諸能力 (Abilities) | 知性、学力、特殊能力・適性、スキル、学習能力 |
パーソナリティ (Personality) | 価値観、興味、ニーズ(欲求)、性格 |
- 右の柱:社会の要因(外的要因)
- その人を取り巻く環境です。
- 家庭、地域社会、学校、経済状況、労働市場などが含まれます。
- アーチの頂点にある要石(キーストーン)
- 両方の柱を繋ぎ、支えているのが**「自己(Self)」**です。
- 個人は、内的要因と外的要因の両方から影響を受けながら意思決定を行い、自己概念を発達させていきます。
- アーチ全体
- 両方の柱に支えられながら、ライフステージを上っていく個人のキャリア発達を表しています。
【試験のポイント】 アーチモデルは、キャリアが個人の内的要因だけで決まるのではなく、環境という外的要因との相互作用の中で発達していくことを示しています。キャリアコンサルタントは、クライエントの興味や適性(左の柱)だけでなく、家庭環境や経済状況(右の柱)も考慮して支援する必要がある、という根拠になります。
5. 職業適合性(Person-Environment Fit)
スーパーは、従来の「個人と職業をマッチングさせる」という単純な考え方(パーソンズの特性因子理論など)に、発達的な視点を加えました。
スーパーが整理した職業適合性の3つのタイプ
- 差異心理学モデル (Differential Psychology)
- いわゆる古典的な「マッチング」です。個人の特性(興味、能力)を測定し、それに最も合う職業を見つけます。
- 例:「あなたは事務能力が高いので、経理の仕事が向いています」
- 発達心理学モデル (Developmental Psychology)
- スーパーが最も重視したモデルです。キャリアは変化・発達するものであり、その時々の自己概念に合った職業を選択していく、と考えます。
- 例:「今は人と接する仕事で自己実現したいと考えているのですね。では営業職を検討しましょう。5年後、もし違う自己イメージになったら、またその時に合う仕事を探せばいいのです」
- 現象学モデル (Phenomenology)
- 客観的な事実よりも、**個人が自分のキャリアや世界を「どう主観的に認識しているか」**を重視します。ナラティブアプローチなどに繋がる考え方です。
- 例:「あなたが『この仕事はつまらない』と感じているその気持ちが重要です。なぜそう感じるのか、一緒に物語を語るように考えていきましょう」
スーパーについて復習問題
【試験対策】スーパーの理論
オリジナル練習問題
スーパーのキャリア理論に関する理解度を確認するためのオリジナルクイズです。全3問、準備ができたら始めましょう。
問 1 / 3
クイズ結果
3問中2問正解
まとめ


スーパーの理論は、「変わり続ける”私”(自己概念)が、人生の様々な舞台(ライフステージ)で、色々な役(ライフロール)を演じながら、”私”らしい生き方(キャリア)を表現していく物語」と要約できます。
この全体像を掴んでおけば、試験でどの角度から問われても、自信を持って解答できるはずです。頑張ってください!
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