キャリアコンサルティングで使われる主要な心理テスト

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まい

キャリアコンサルティングで使われる主な心理テストをご紹介するよ

目次

キャリアコンサルティングで活用される主要な心理アセスメントツール

キャリアコンサルティングにおける心理アセスメントツールは、相談者が自分自身の興味、能力、価値観、行動特性などを客観的に把握し、自己理解を深めるために用いられます。検査結果は絶対的なものではなく、あくまで対話を通じて気づきを促し、主体的なキャリア選択を支援するための一つの材料です。

まい

ここでは、日本のキャリアコンサルティングの現場で広く活用されている主要な4つのツールについて詳しく解説します。

1. 厚生労働省編 一般職業適性検査(GATB)

厚生労働省編 一般職業適性検査(General Aptitude Test Battery、略称: GATB)は、個人の職業適性を客観的に測定するために開発されたツールです。様々な職業で必要とされる能力のうち、代表的な9つの能力(適性能)を測定し、受検者が自分自身の能力的な強みや弱みを理解することを助けます。

もともとはアメリカ合衆国労働省によって開発されたものを、日本の労働市場に合わせて標準化したもので、長年にわたり、中学校、高等学校、大学、ハローワーク、企業などで広く活用されています。

GATBで、クライアントの「得意」を見つける

厚生労働省編 一般職業適性検査(GATB)は、クライアントの能力を客観的に「見える化」するツールです。クライアント自身も気づいていない強みや可能性を発見し、納得のいくキャリア選択を支援する上で強力な武器となります。

💡
自己理解の深化

得意・不得意を客観的データで把握し、クライアントの自己理解を促します。

🧭
職業選択の支援

能力が活かせる職業群を示し、具体的なキャリアの選択肢を広げます。

🌱
キャリアプランニング

目標と現状の差を明確にし、具体的な学習計画の立案をサポートします。

検査の構成

GATBは、制限時間内に速く正確に課題をこなす「最大能力検査」です。主に2種類の検査方法で、クライアントの能力を多角的に測定します。

📝 紙筆検査

計算、図形照合、言語読解など、11種類のペーパーテストで構成されます。

所要時間: 約45〜50分
🖐️ 器具検査

専用の器具を使い、指先や手腕の器用さなどを測定する4種類の検査です。

所要時間: 約12〜15分

測定される9つの適性能

GATBは、様々な仕事をこなす上で基礎となる9つの能力(適性能)を測定します。下のリストから適性能をクリックすると、チャート上の対応する点がハイライトされ、詳しい説明が表示されます。キャリアコンサルティングでの説明にご活用ください。

適性能プロフィール (例)
適性能リスト

2. 職業レディネス・テスト(VRT)

VRTは、主に中学生・高校生を対象に、職業への準備度(レディネス)を把握するために開発された検査です。米国の心理学者ジョン・L・ホランドの理論をベースにしており、個人の興味や自信の傾向から自己理解を促し、進路選択への動機づけを行います。

目的

職業への興味・関心や自信の有無、日常の行動特性を明らかにすることで、自分らしい職業選択やキャリアプランニングの第一歩を踏み出すことを支援します。

活用方法

興味がある領域(A検査)と自信がある領域(C検査)を比較し、その一致点や相違点について考えます。例えば、「興味はあるが自信がない」分野については、今後の学習や経験によって自信をつけていく目標となり得ます。結果をもとに、自分のタイプに合った職業例を参考にしながら、職業世界への理解を深めます。

VRTで、クライアントの「興味」を探る

職業レディネス・テスト(VRT)は、クライアントがどのような分野に興味を持っているかを明らかにし、職業選択の方向性を見出すための検査です。「何がしたいかわからない」というクライアントの自己理解を促し、キャリア探索の第一歩を支援します。

VRTが測定する3つの側面
❤️
興味 (Interest)

どのような活動や分野に関心があるか。

💪
自信 (Confidence)

特定の活動に対して、どの程度うまくできる自信があるか。

🧭
職務遂行の自信

社会的な活動や職務をこなしていく上での基礎的な自信。

中心的な考え方:6つの興味領域 (RIASEC)

VRTは、ジョン・ホランド博士の理論に基づき、人々の興味を6つのタイプに分類します。これを「RIASEC(リアセック)」モデルと呼びます。下のタイプをクリックして、それぞれの特徴や関連する職業の例を見てみましょう。

職業の例:

結果の活用とコンサルティングへの応用

VRTの結果は、クライアントの興味のパターン(スリーレターコード)を把握し、キャリアカウンセリングに活かすための出発点となります。

興味のパターンの理解

結果は、興味の高い上位3つのタイプの頭文字(例: RIA, SAE)で示されます。この「スリーレターコード」を手がかりに、クライアントの興味の中心を探ります。

自己理解と対話の促進

「なぜこの分野に興味があるのか」「どんな経験が影響しているか」といった対話を促す材料になります。検査結果と本人の実感とのズレについて話し合うことも重要です。

職業情報との接続

興味のパターンをもとに、職業興味検査(VPI)の結果や様々な職業情報を参照し、具体的なキャリアの選択肢へと繋げていきます。

GATBとの組み合わせ

興味(VRT)と能力(GATB)の両面からアプローチすることで、より多角的で深い自己理解を促し、納得感のあるキャリア選択を支援できます。

3. VPI職業興味検査

VPIもホランドの理論に基づいた、個人の職業興味の傾向を測定する検査です。主に大学生や成人を対象とし、160の具体的な職業名に対して「好き(Y)」か「嫌い(N)」で答えるシンプルな形式です。

目的

6つの興味領域と5つの心理的な傾向を測定し、個人のパーソナリティと職業興味の特徴を明らかにします。自己理解を深め、キャリアカウンセリングや進路相談の場面で活用されます。

VPIとVRTの違い:興味をさらに具体化する

VPI職業興味検査は、VRT(職業レディネス・テスト)と同じくホランドのRIASEC理論に基づきますが、より具体的な職業への興味を測定する点で異なります。VRTが「活動」への興味から大まかな方向性を探るのに対し、VPIは「160の具体的な職業名」への興味・関心を通じて、クライアントの指向性をよりシャープに描き出します。

VRT(職業レディネス・テスト)

「絵を描く」「計算する」といった「活動」への興味を問い、興味の全体的な方向性やパターンを把握するのに適しています。

VPI(職業興味検査)

「グラフィックデザイナー」「会計士」といった「職業名」への興味を問い、具体的なキャリアの選択肢と結びつけるのに強力な手がかりとなります。

VPIの核心:具体的な職業リストとの照合

VPIの強みは、RIASECの6つの興味領域と具体的な職業を結びつけて理解できる点にあります。下の検索機能を使って、どのような職業がどの興味領域に分類されるか体験してみましょう。

コンサルティングでのVRTとの使い分け

VRTが有効なケース

「何がしたいか全くわからない」というクライアントに対し、まずは興味の大枠を掴むために使用します。キャリア探索の出発点として最適です。

VPIが有効なケース

VRTである程度の方向性が見えた後、興味を具体化し、職業知識を広げるために使用します。より多くの選択肢を提示し、視野を広げるのに役立ちます。

興味の明確化と具体化

「S(社会的)なことに関心がある」というVRTの結果から、「では、”キャリアカウンセラー”や”教師”といった職業には興味がありますか?」と、VPIの結果を使って対話を深めることができます。

GATBとの補完的利用

VRT/VPIで「興味のあること(want)」を、GATBで「得意なこと(can)」を明らかにすることで、両者の重なり合う領域から、より納得感の高いキャリア目標を設定できます。

4. キャリア・インサイト(統合版)

キャリア・インサイトは、利用者が自分でパソコンを操作しながら、キャリアガイダンスの一連の流れを体験できる総合的な自己診断システムです。適性評価、職業情報の検索、適性と職業との照合、キャリアプランニングなどを統合的に行うことができます。

目的

自己理解、職業理解、啓発、キャリアプランニングの4つの側面から、利用者の主体的なキャリア形成を総合的に支援することを目的としています。

特徴

  • 統合的なシステム: 適性診断から職業情報検索、キャリアプランの作成までを一つのシステム内で完結できます。
  • 対話的な操作性: 利用者がPC画面の質問に答えていく形式で、自分のペースで進めることができます。
  • 豊富な情報提供: 診断結果に紐づいた職業リストや、各職業の詳細情報(仕事内容、必要な知識・スキルなど)をその場で閲覧できます。
  • コース選択: 若年者向けの「ECコース」と、ミッド・キャリア層向けの「MCコース」があり、利用者の経験や年代に合わせて利用できます。

キャリア・インサイト:自己理解の統合的アプローチ

キャリア・インサイトは、これまでに紹介したGATBやVPI/VRTとは異なり、個人の特性を多角的に測定し、それらを統合してキャリアガイダンスを行うための総合的なシステムです。クライアントの全体像を捉え、より深い自己理解を促すことを目的としています。

自己理解を構成する「4つの柱」

キャリア・インサイトは、以下の4つの側面から適性を評価し、それらを統合して適職を探索します。

💪
能力

GATBに近いが、主に自己評価による「自信度」を測定。

❤️
興味

VRT/VPIの基礎であるRIASECモデルで測定。

⚖️
価値観

仕事に求めるもの(例:高収入、安定、社会貢献)を測定。

🏃‍♀️
行動特性

仕事の進め方や対人関係のスタイルなどを測定。

統合プロフィールのシミュレーション

これら4つの柱がどのように統合され、個人のプロフィールを形成するか見てみましょう。下のボタンでサンプルプロフィールを切り替えると、それぞれの特徴と適職の例が表示されます。

適職の方向性(例):

    コンサルティングでの活用のポイント

    全体像の把握

    単一の側面だけでなく、能力・興味・価値観・行動の相互作用を捉え、クライアントの全体像を理解します。「興味はあるが自信がない」「能力はあるが価値観と合わない」といった葛藤の発見にも繋がります。

    キャリアプランニングへの展開

    適職リストを提示するだけでなく、長期的なキャリアプランやライフプランについて考えるための対話ツールとして活用します。システム内のキャリアプランニング機能も支援に役立ちます。

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