【論述】第28回キャリア協議会

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目次

内容理解

1. 相談者プロフィール

氏名: Aさん

年齢: 42歳 男性

学歴: 4年制大学卒業

所属: 中堅IT企業 (従業員500名)

職務経歴: システムエンジニア (20年)

現職: プロジェクトリーダー

家族構成: 妻(40歳), 長男(10歳)

相談の核心

課長職への昇進を打診されたが、技術者として現場に留まりたい気持ちと、管理職としての将来性との間で決断できずに悩んでいる。

2. 問題の分析 (キャリアコンサルタントの視点)

技術者としての価値観と新たな役割との葛藤

20年間、技術者として「専門・職能的コンピタンス」をキャリアの軸としてきた。昇進という転機を前に、自身が本当に大切にしたい価値観や、管理職への適性、興味について深く理解・整理できていない状態です。

3. 支援のステップ

1

関係構築

感情に寄り添い、安心して話せる関係を築く

2

自己理解

経験を振り返り、価値観や強みを明確化する

3

仕事理解

役割に関する情報を収集し、固定観念を払拭する

4

意思決定支援

多角的に検討し、納得のいく決断を促す

4. キャリア選択のシミュレーション

カウンセリングを通じて、Aさんの視点はどう変化するでしょうか?下のボタンでシミュレーションしてみましょう。

5. 解答のポイント解説

相談者の言葉を要約し、「何に悩んでいるか(意思決定)」と「どう感じているか(将来への不安)」の2点を明確に記述することが重要です。

「自己理解不足」「仕事理解不足」という基本視点に加え、「キャリア・アンカー」などの専門理論を用いて問題を構造的に捉え、専門家としての見識を示します。

相談者の自律的な成長を最終目標に設定します。方策は「関係構築→自己理解→仕事理解→意思決定支援」という論理的な流れで、具体的なアプローチを記述します。

第28回キャリアコンサルタント国家試験 論述試験 解答・解説(想定問題)

想定問題:事例概要

相談者: Aさん(42歳、男性、4年制大学卒業) 所属企業: 中堅IT企業(従業員500名) 職務経歴: 新卒で入社後、20年間システムエンジニアとして勤務。現在はプロジェクトリーダーとして現場の第一線で活躍。 家族構成: 妻(40歳、パート)、長男(10歳) 相談内容(要約): 先日、上司から課長職への昇進を打診された。自分を評価してくれていることは嬉しいが、管理職になると現場の仕事から離れてしまうことに抵抗がある。自分は技術者として、最先端の技術を追求していくことにやりがいを感じてきた。一方で、この年齢で管理職にならないと、今後のキャリアや収入面で不安もある。妻からは「チャンスなんだから挑戦してみたら」と言われているが、どう決断すれば良いか分からず、悩んでいる。

模範解答

問1. 逐語記録から、相談者がこの面談で相談したい「問題」は何かを記述せよ。

課長職への昇進を打診されたことを機に、管理職としてキャリアアップを目指すか、専門職として現場に留まるかというキャリアの方向性について選択を迫られ、意思決定ができないでいること。また、その選択が今後のキャリアや収入にどう影響するのかという将来への不安を感じていること。

問2. キャリアコンサルタントとして、あなたがこの相談者の「問題」をどのように捉えるか、あなたの考えを記述せよ。

相談者の問題は、キャリアの転機において、これまでの自身のキャリアで培ってきた価値観と、新たな役割への期待との間で葛藤が生じている点にあると捉える。具体的には、以下の3点が考えられる。

  1. 自己理解の不足: 20年間、技術者として「専門・職能的コンピタンス」をキャリア・アンカーとしてキャリアを形成してきた。しかし、昇進という転機を前に、自身が本当に大切にしたい価値観や、管理職への適性、興味について深く理解・整理できていない状態である。
  2. 仕事理解の不足: 管理職という役割について、「現場から離れる」という一面的なイメージに留まっている可能性がある。管理職の具体的な職務内容、求められる能力、やりがい、キャリアパス、また、専門職としてキャリアを継続した場合の将来像について、客観的で十分な情報が不足していると考えられる。
  3. キャリアプランニングの視点の欠如: 目先の選択に捉われ、中長期的な視点でのキャリアプランを描けていない状態である。変化に対する不安や、「こうあるべき」という思い込みから、主体的な意思決定が困難になっている。

問3. 上記問1、問2を踏まえ、あなたがキャリアコンサルタントとして、この相談者を援助するために、どのような目標を設定し、どういう働きかけ(方策)を行うか。

【目標】 相談者が、自身の価値観や能力、興味への理解を深め、管理職と専門職双方のキャリアパスについて客観的な情報を得ることで、自らの意思で納得のいくキャリアの方向性を決定し、主体的にキャリアプランを構築できるようになること。

【方策】

  1. 傾聴による関係構築と感情の明確化: まずは、昇進への喜びと同時に、将来への不安や葛藤といった複雑な感情を抱えている相談者の気持ちに寄り添い、受容的・共感的な態度で傾聴する。安心して話せる関係性を維持・深化させ、相談者自身が自分の感情や考えを整理できるよう支援する。
  2. 自己理解を深めるための支援:
    • これまでの職業人生を振り返る「キャリア・ライフ・ライン」の作成を促し、成功体験ややりがいを感じた場面、そこで発揮された能力や大切にしていた価値観を共に確認する。
    • シャインのキャリア・アンカー理論などを参考に、自身のキャリアの軸となっているものは何かを明確にする。必要に応じて、価値観カードなどのアセスメントツールの活用も提案する。
  3. 仕事理解を深めるための支援:
    • 管理職、専門職それぞれの役割について、相談者が持っているイメージ(メリット・デメリット)を整理してもらう。
    • その上で、社内のロールモデルとなる管理職や専門職の先輩社員へのインタビューを提案するなど、客観的で具体的な情報を収集できるよう働きかける。これにより、役割への理解を深め、固定観念を払拭する機会を作る。
  4. 主体的な意思決定の支援:
    • 自己理解と仕事理解で得られた気づきを統合し、両方の選択肢を選んだ場合の短期・中期・長期的なキャリアプランを複数描けるよう支援する。
    • 意思決定を支援するツールとして「バランスシート」の作成を提案し、それぞれの選択肢がもたらす自分自身や家族への影響などを多角的に検討できるよう促す。最終的には、相談者自身が納得して決断できるよう、そのプロセスを支援する。

解答のポイント解説

問1:問題の把握

相談者の言葉(「どう決断すれば良いか分からず、悩んでいる」「将来への不安」など)を要約し、**「何に悩んでいるのか(キャリアの方向性の意思決定)」「それによってどう感じているのか(将来への不安)」**の2点を明確に記述することが重要です。相談者の言葉を使いつつ、キャリアコンサルタントの視点で問題を整理します。

問2:キャリアコンサルタントとしての見立て

ここでは、相談者の問題を専門的な視点から分析・解釈します。**「自己理解不足」「仕事理解不足」は、キャリアコンサルティングにおける問題把握の基本となる視点です。 今回のケースでは、シャインの「キャリア・アンカー」**という理論を用いることで、専門職としての価値観と管理職への期待との葛藤を論理的に説明できます。このように、具体的なキャリア理論のキーワードを盛り込むことで、専門家としての見識を示すことができます。

問3:目標と方策

【目標設定】 「どうなればこの面談が成功と言えるか」というゴールを具体的に示します。「相談者が自ら意思決定し、主体的にキャリアプランを構築できる」というように、相談者の自律的な成長を最終目標に据えることが重要です。

【方策】 方策は、**「関係構築→自己理解→仕事理解→意思決定支援」**という論理的な流れで記述することがポイントです。

  • **関係構築(ラポール)**は全ての基本です。まず最初に触れるようにしましょう。
  • 自己理解・仕事理解では、「キャリア・ライフ・ライン」や「ロールモデルへのインタビュー」など、具体的なツールやアプローチを提示します。これにより、説得力のある解答になります。
  • 意思決定支援では、コンサルタントが答えを与えるのではなく、あくまで相談者が自分で決めるためのプロセスを支援するというスタンスを明確にすることが求められます。

この解答例が、あなたの試験対策の一助となれば幸いです。頑張ってください。

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