チャチャ論述問題解けなくはないけど、毎回自信ないよ……



コツさえつかめば、本番で慌てずに自信を持って答えられるよ!
キャリアコンサルタントの資格試験、特に論述問題ってどう対策したらいいか悩みますよね。「何を書けばいいの?」「時間は足りる?」そんな不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、キャリアコンサルティング協議会の論述試験で、合格点を取るための具体的なコツをわかりやすく解説します!
「どうしてそう答えるの?」を段階ごとゆっくり解説。これさえ押さえれば、合格はぐっと近づきます!



ぜひチェックだよ
1.論述試験の概要と評価基準をチェックしよう(キャリ協)



まずはじめに、キャリ協の論述試験の概要と評価基準(実質)を把握しておきましょう
📊合格シミュレーター
論述と面接の想定得点をスライドして、合格の仕組みを掴みましょう。
合計得点: 100 / 150点
試験のキホン
時間
50分
事例の読解から記述まで、時間配分が重要です。
形式
事例形式の記述
専門家の視点で相談者の課題を見立て、対応を記述します。
合格基準
合計90点以上
ただし、論述試験には足切り点 (20点) があり、面接試験にも足切り基準が設けられています。
「何が見られているか」を知る
5つの評価ポイント
① 相談者理解
+▶︎「この人は、今どんな気持ちなんだろう?」と深く寄り添う視点
相談者が語る言葉の裏にある感情(不安、焦りなど)や、置かれている状況(職歴、家族など)を、文章からしっかり読み取れているかが見られます。
解答のヒント
- 相談者の発言を引用し、「この言葉から〜という気持ちがうかがえる」と記述する。
- 年齢や職歴などの情報から、状況を想像し、記述に反映させる。
② 問題の整理・仮説構築
+▶︎キャリアコンサルタントとして「問題の核心」を見立てる力
相談者自身も気づいていないかもしれない問題の本質を、専門家の視点で見抜く力です。「この相談者が本当に解決すべき課題は、ここではないか?」という仮説(見立て)を立てることが求められます。
解答のヒント
- 「相談者は〇〇に悩んでいるが、真の問題は△△にあると考えられる」という形で記述する。
- 自己理解不足、仕事理解不足などの視点で問題を整理する。
③ 支援方針・展開の論理性
+▶︎「だから、こう支援する」という一貫したストーリー
見立てた問題点に対し、「具体的にどう支援していくのか」という今後の方向性(ゴール)と、そこに至るステップを論理的に示す力です。根拠のある支援計画を立てられるかが評価されます。
解答のヒント
- 「問題解決のため、まず〜に取り組み、次に〜へ進める」のように段階的に示す。
- 支援の目標設定(どういう状態を目指すのか)を明確にする。
④ キャリア理論や相談技法の適用
+▶︎学んだ知識を「実践」で使う力
キャリア理論(例:ホランドの理論)やカウンセリング技法を、ただ知っているだけでなく、「この相談者のこの状況に、この理論が有効だ」と適切に結びつけて説明できるかが問われます。
解答のヒント
- 「価値観を明確にするため、シャインの理論を参考に支援したい」のように理論と支援を結びつける。
⑤ 記述の明確さ・誤解のない表現
+▶︎採点者に「伝えたいこと」がきちんと伝わる文章力
素晴らしい分析や計画も、文章で伝わらなければ評価されません。誰が読んでも分かりやすい言葉で、具体的かつ明確に記述することが大切です。
解答のヒント
- 主語と述語を明確にする。
- 「〜など」といった曖昧な表現を避け、具体的に書く。
解説:論述試験の概要
- 時間:50分
- 形式:与えられた事例(相談者=CLと相談場面)を読み、
設問に沿って キャリアコンサルタントとしての理解・対応を記述 - 配点:実技試験(論述試験と面接試験):
合計150点満点で90点以上が合格基準。
論述試験は満点の40%以上(60点中24点以上)が必要。
面接試験は各評価区分ごとに満点の40%以上の得点が必要。
論述試験は記述式、面接試験はロールプレイと口頭試問で構成される。



論述試験と面接試験の合計点が90点以上なら実技は合格か。
実技は緊張してどうなるか不安だから、論述でできるだけ点数を取っておきたいな
解説:評価基準(非公開だが実質的には)
論述試験の評価基準は非公開です。しかし受験の指導者や合格者の間では、以下の点が実質的に重要視されています。
- 相談者理解(背景・課題・感情の把握)
- 問題の整理・仮説構築
- 支援方針・展開の論理性
- キャリア理論や相談技法の適用
- 記述の明確さ・誤解のない表現
記述の仕方・テクニック
具体的な記述の仕方を見ていく前に、全体を通して特にここだけは気を付けようというポイントをみていきましょう。



減点されるポイントといわれています。しっかり押さえて、内容で加点を狙いましょう!
解答欄の行数は、その問いに答えるために「必要な内容をすべて盛り込むと、そのくらいの分量になる」という意図で設定されています。解答欄に空白が目立つと、内容が不足していると判断され、減点の可能性があります。文章量そのもので評価されるわけではありませんが、「内容の過不足」を判断する一つの重要な指標です。まずは指定された行数をすべて埋めることを目標に、必要な要素を盛り込む練習をしましょう。
解答の根拠は、あなたの推測や意見ではなく、必ず問題文の「逐語録」の中にあります。「なぜそう考えたのか?」の根拠を、必ず相談者の言葉や態度から見つけて記述することが、説得力のある解答につながります。
NGな記述 ✗
「〜だろう」「〜に違いない」といった、主観的な憶測に基づいた文章。
OKな記述 ✓
「相談者は『(逐語録の具体的な発言)』と述べており、このことから〜と考えられる」のように、逐語録の事実を引用する文章。
コンパクトで論理的な文章が求められます。1行あたり40〜50字を目安に、必要な要素を過不足なく盛り込むと、およそ下記の文字数に収まります。
目標文字数の目安
- 設問1, 2: 90字前後
- 設問3 ①見立て: 85字前後
- 設問3 ②根拠: 130字前後
- 設問4: 270字前後
記述の要点まとめ
| 推奨される記述 (Do) | 避けるべき記述 (Don’t) |
|---|---|
| 逐語録の具体的な発言を根拠として引用する。 | 自分の憶測や想像で記述する。 |
| 設問の意図を汲み取り、必要な要素を盛り込む。 | 解答欄に大きな空白を残す。 |
| 指定された文字数を目安に、簡潔にまとめる。 | 冗長で、要点が不明瞭な文章を書く。 |
典型的な出題パターン
キャリ協の論述は毎回構成が似ています。以下のような問題構成です。



それぞれどんなところを見られるか把握しておこう!
解法ステップ(実戦的手順)
各設問のに取り掛かるまえに、事例を読み込む際に行っておくとよいことについてお伝えします。
事例文の情報は3層構造
事例文には以下の3層の情報が載っています
- 事実 … 年齢、職業、経歴、発言など
- 感情 … 不安・焦り・怒り・迷い・希望
- 意味 … なぜそれを言うのか、何を大切にしているのか(価値観)
基本的には、事例文にある情報をもとに解答します。まずはこの3つの情報が載っているなということを覚えてください。
事実の中では「状況・きっかけ」を掴むと設問につながりやすい
事例文に載っている事実の中には、いろいろな情報があります。
・文学部を卒業した
・現在は45歳
・課長職
・派遣社員として2年勤めている
・最初はパートであったが、最近正社員になった
・うちの会社でもテレワークができたらと言ったが「本社じゃないので無理でしょ」といわれてしまった
このような事実の情報の中でも、「現在の(ここに至る)状況」や「(悩みにつながる)きっかけ」を掴むと、設問1、設問2が特に解きやすくなります。
相談者の状況が特にわかる記載を見つけたら、ぜひ線を引いておきましょう。
相談者の「感情・意向」がわかる記述にはヒントがいっぱい
事例文の中で、相談者の気持ち、どうしたい(でもできないなど)かがわかる記述には、主訴そのものや主訴につながるヒントが隠れています。
・「実際にやってみると思っていたのと違った」
・「自分が管理職をやっていけるのか、自信がない」
・「今までの経験で転職できるかと思うと、ムリな気がして」
・「このままでいいのか、と思うが具体的にどうしたいかと言われると困ってしまう」
これらの言葉は、クライエントの悩みや不安、主訴そのものであったり、主訴につながるヒントであったりします。
読みながらこちらには波線を引いていくようにしましょう
設問1の解き方
基本戦略:クライアントの言葉を基にする
設問1の解答で最も重要なのは、事例中のクライアントが語った言葉を**「なるべくそのまま」**抜き出して使うことです。これにより、解答者の解釈が入るリスクを避け、客観的な主訴を捉えることができます。
独自の言葉で要約すると、クライアントの本来の気持ちと完全に合致していても、書き手の意図しない解釈や考えが入り込んでしまう可能性があります。特に解答に慣れていない方は、逐語録の言葉をそのまま使う方が無難です。
逐語録の言葉よりもクライアントの主訴を的確に表現できる、よりふさわしい要約ができる場合は、そちらを使用しても構いません。ただし、その場合もクライアントの気持ちと齟齬がないか、慎重に吟味することが大切です。
おすすめの文章構成(90文字前後)
以下の3つの要素をこの順番で組み合わせることで、まとまりのある解答を作成しやすくなります。
1. 状況
クライアントが置かれている客観的な事実。
2. 感情
その状況に対して抱いている気持ち。
3. 相談内容
「~について相談したい」という形で締めくくる。
インタラクティブ・ウォークスルー
ステップ1:状況と感情に印をつける
以下の文章を読み、「状況」と「感情」に当てはまると思う単語やフレーズをクリックして分類してください。
最終チェックポイント
- 記述内容は、事例中の事実に即していますか?
- 指定された行数や文字数に収まっていますか?
設問1に解答する上で重要なのは、事例中のクライエントが語った言葉をもとにすることです。特に、事例を読みながら「状況」を示す部分に直線、「感情」を示す部分に波線を引くなどして印をつけた箇所は、「なるべくそのまま」抜き出して使うことをお勧めします。
なぜ「そのまま」がいいの?
独自の言葉で言い換えたり、文章を創作したりすると、クライエントの気持ちと完全に合致していたとしても、書き手の意図しない解釈や考えが入り込んでしまうリスクがあります。



解答に慣れていない方や自信がない方は、まずは逐語録にある言葉をそのまま使う方が無難です。
自信がある場合のアプローチ
もちろん、逐語録の言葉よりもクライエントの主訴を的確に表現できる、よりふさわしい要約ができる場合は、そちらを使用しても構いません。ただし、その場合もクライエントの気持ちと齟齬がないか、慎重に吟味することが大切です。
具体的な解答作成の手順
おすすめの文章構成(90文字前後)
以下の流れで構成すると、まとまりのある解答にしやすくなります。
- 状況: クライエントが置かれている客観的な事実。
- 感情: その状況に対して抱いている気持ち。
- 相談内容: 「~なことについて相談したい」「~ということで相談に来た」といった形で締めくくる。
解答作成の5ステップ
- 印をつける: 事例を読みながら、上記を参考に「状況」に直線、「感情」に波線を引いていく。
- 取捨選択: 印をつけた言葉の中から、クライエントの主訴として最も優先度の高いものを選択する。
- 文章構成: 「状況」→「感情」→「相談内容」の構成に沿って、選んだ言葉を並べ、文章の骨子を作る。
- 調整: 全体で90文字前後になるように、言葉を削ったり、接続詞を整えたりして長さを調整する。
- 記入: 解答欄に清書する。
【最終チェックポイント】
- 記述内容は、事例中の事実に即していますか?
- 指定された行数内に収まっていますか?
設問2の解き方
キャリアコンサルタント協議会の論述試験における設問2は、キャリアコンサルタント(CC)の特定の応答の「意図」を問う問題です。



この設問で高得点を取るためには、単に技法名を答えるだけでなく、「なぜその応答をしたのか」をCL(相談者)の文脈に沿って的確に説明する必要があります。
ここでは、設問2を解くための思考プロセスと、満点解答を作成するためのフレームワークを分かりやすく解説します。
CCの基本姿勢:応答の意図の根源
全ての応答は、相談者(CL)が自身と向き合うことを支援するためにあります。
自己内省を促す
自身の感情、価値観、考えに目を向けるよう働きかけます。
感情の明確化
漠然とした気持ちを、はっきりした言葉で認識できるよう手助けします。
思考の整理
混乱した考えを整理し、問題の本質を捉えやすくします。
言語化を支援
頭の中の考えを言葉として表現できるようサポートします。
解答を導き出すための「3つのステップ」
この3段階で思考を整理することで、的確な解答を作成できます。
ステップ1:文脈を正確に把握する
CCの応答がどのような状況で発せられたかを理解します。特に重要なのは、CCの応答の「直前」のCLの発言です。CLが発したキーワードや感情表現に注目し、「CLの発言 → CCの応答」という流れを捉えることが全ての基本です。
高得点を狙う!解答の「黄金フレームワーク」
このフレームワークに当てはめることで、論理的で説得力のある解答が完成します。
相談者の 「〇〇」という発言(気持ち) を受け、 △△という技法を用いて 、 □□という気づきを促す 意図があると考える。
実践シミュレーター
学んだ知識を使って、実際に解答を作成してみましょう。
【ケース】
CL1: なんとなく、今の仕事にやりがいを感じられないんです…
CC1: やりがいを感じられない、と感じていらっしゃるのですね。
生成された解答:
最後のワンポイントアドバイス
「言語追跡」を意識する
CCがCLのどの言葉を拾って応答しているのかを明確に意識しましょう。
文末表現を工夫する
意図は推測なので、「~という意図があると考える」「~を促すため」が無難です。
迷ったら「深掘り」と「明確化」
「CLの直前の発言を深掘りし、内省や明確化を促す」という視点が核心を突くことが多いです。
1.解答を導き出すための「3つのステップ」
設問で指定されたCCの応答の意図を考える際、以下の3つのステップで思考を整理すると、的を射た解答を作成しやすくなります。
ステップ1:文脈を正確に把握する
まず、CCの応答がどのような状況で発せられたのかを理解します。特に重要なのは、CCの応答の「直前」のCLの発言です。
- 応答の【前】:CLは何について、どのように話していましたか?(例:「自信がない」「どうしたらいいか分からない」など、CLが発したキーワードや感情表現に注目)
- 応答の【後】:CCの応答を受けて、CLの話はどのように変化・深化しましたか?(例:具体的なエピソードを話し始めた、気持ちをより詳しく語り始めたなど)
CCの応答は、必ず直前のCLの発言を受けて行われます。この「CLの発言 → CCの応答」という流れを捉えることが、意図を理解する上での大前提となります。
ステップ2:使われている「技法」を特定する
次に、CCの応答がどのようなカウンセリング技法に当たるかを考えます。
- 感情の反映:CLの言葉の裏にある感情を汲み取り、言葉にして返す。「~と感じていらっしゃるのですね」
- 言い換え:CLが話した内容を、CCが別の言葉で要約して返す。「つまり、~ということですね」
- 質問:CLの気づきや内省を促すために問いかける。「それについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?」
- 明確化:CLの曖昧な表現を、より具体的にするよう促す。「『うまくいかない』というのは、具体的にどのようなことですか?」
技法を特定することで、その応答が持つ目的(意図)がよりクリアになります。
ステップ3:「CCの意図」を言語化する
ステップ1と2を踏まえ、「なぜCCはこのタイミングで、この技法を使ったのか?」という核心部分を考えます。CCの基本的な狙いは、CLが自分自身と向き合い、自律的な意思決定ができるよう支援することにあります。
具体的には、以下のような意図を持っている場合が多いです。
- 自己内省を促す:CLが自分自身の内面(感情、価値観、考え)に目を向けるよう働きかける。
- 感情の明確化を支援する:CLが抱える漠然とした気持ちを、はっきりとした言葉で認識できるよう手助けする。
- 思考の整理を促す:混乱しているCLの考えを整理し、問題の本質を捉えやすくする。
- 言語化を支援する:CLが頭の中で考えていることを、言葉として表現できるようサポートする。
2.高得点を狙う!解答の「黄金フレームワーク」
上記の3ステップで考えた内容を、以下のフレームワークに当てはめて文章を構成すると、論理的で説得力のある解答になります。
相談者の「〇〇」という発言(気持ち)を受け、△△という技法を用いて、□□という気づきを促す意図があると考える。
フレームワークの解説
- 〇〇(CLの発言・気持ち)
- ステップ1で捉えた、CCの応答の直前のCLの具体的な言葉や感情を記述します。
- 例:「『どうしたらいいか分からない』というCLの行き詰まった気持ちを受け…」
- △△(CCの技法)
- ステップ2で特定した技法名とその応答内容を記述します。
- 例:「感情を反映し、CLの気持ちに寄り添うことで…」
- 例:「『具体的には』と問いかける開かれた質問によって…」
- □□(促したい気づき・CLへの効果)
- ステップ3で考えたCCの意図を記述します。CLにどうなってほしいのか、という視点で書きます。
- 例:「CL自身が問題だと感じていることの本質について、内省を促す意図がある。」
- 例:「自身のキャリアで大切にしたい価値観を明確にすることを支援する目的があった。」
3.解答作成のワンポイントアドバイス
- 文末表現を工夫する CCの意図はあくまで「推測」です。そのため、**「~という意図があると考える」「~を促すため」**といった表現を使うのが無難です。文字数に余裕があれば、より丁寧な「~と考える」が良いでしょう。
- 「言語追跡」を意識する CCの基本は、CLが話した言葉を丁寧に追いかける「言語追跡」です。解答を作成する際は、CCがCLのどの言葉を拾って応答しているのかを明確に意識しましょう。
- 裏ワザ的思考 迷ったときは、「CLの直前の発言を深掘りし、内省や明確化を促そうとしている」という方向で考えてみましょう。多くの場合、この視点が核心を突いています。



なんとなくかけそうな気がしてきた!



設問2は、CCとしてCLにどう向き合うべきかという基本姿勢が問われる問題です。この解説を参考に、逐語記録を丁寧に読み解く練習を重ねてください。
設問3の解き方
ここでは、特に多くの受験生が悩むポイントである「設問3」について、考え方のコツを一緒に見ていきましょう。「キャリアコンサルタントから見た相談者の問題(①見立て)」と「その根拠(②)」をどうやって導き出せば良いか、分かりやすく解説していきますね。
はじめに:設問3で何が問われているの?
① 見立て:相談者の「本当の問題」は?
相談者が語る悩みの奥に隠された、キャリアコンサルタントの視点から見た本質的な問題点(見立て)を明らかにすることが求められます。
② 根拠:なぜそう考えたの?
見立てた問題の裏付けとなる、逐語録の中の相談者の具体的な発言(根拠)を正確に示す必要があります。見立てと根拠がセットで評価されます。
ポイント:設問3での見立ては、次の設問4で考える「支援プラン」の土台になります。ここで的確な問題把握ができるかが合格への鍵です!
ステップ1:問題を見立てるための「5つの視点」
相談者の問題を整理するための便利な切り口です。カードをクリックして詳細を確認しましょう。
ステップ2:実践トレーニング
相談者の言葉から、どの「視点」に当てはまるか考えてみましょう。
下のボタンを押してトレーニングを開始してください。
ステップ3:解答作成のコツ
見立ては2つがおすすめ
自信がない時も、2つ挙げることで多角的な視点を示せ、精神的にも安心です。優先度の高いものから選びましょう。
文字数を意識する
見立てを増やしすぎると、根拠を十分に説明できなくなります。2つの見立てに絞り、根拠を丁寧に記述しましょう。
設問4との連携
設問3の見立ては、設問4の支援策に直結します。「この問題に対し、この支援を行う」という一貫性が重要です。
解答の構成例(イメージ)
設問3① キャリアコンサルタントから見た相談者の問題
1. ご自身の価値観や強みへの理解が、もう少し必要である点(自己理解不足)
2. お仕事に対するイメージが、少し固まっている点(仕事理解不足)
設問3② 上記を問題と判断した根拠
(1の根拠)「自分の強みが何か、これまで考えたこともなかった」というご発言から、ご自身の魅力について、まだ十分に振り返る機会がなかったことがうかがえるため。
(2の根拠)「営業は大変そう」という言葉から、営業職の幅広い魅力や多様な側面について、まだ知る機会がなかった可能性があると考えられるため。
はじめに:設問3では何が求められているの?
まずは、設問3が何を意図しているのかを、リラックスして確認してみましょう。この設問は、大きく2つの質問で構成されています。
- 何を問われているか?
- 設問3①:相談者が話している悩みの奥にある、プロの視点から見た「本当の問題点(見立て)」はなんだろう?
- 設問3②:どうしてそう考えたの?そのヒントになった相談者の言葉(根拠)はどこ?
- なぜ重要か?:ここで見つけた「問題点」が、次の「設問4」で考える「これからの支援プラン」の出発点になります。「この問題があるから、こんなサポートをしよう」と、スムーズに話をつなげるための大切なステップです。
ポイント 相談者が「これが悩みです」と言っていることと、あなたがプロとして「これがポイントかも」と感じることは、違う場合もよくあります。相談者自身もまだ気づいていない、隠れた問題点を見つけてあげることが大切になります。
ステップ1:根拠を選び、問題を見立てよう(復習&実践)
設問全体の解き方で確認したように、逐語録の大切な言葉には、すでに直線(事実)や波線(感情)が引いてありますね。ここでは、そのたくさんのヒントの中から「設問3の根拠」として最も説得力のある言葉をピックアップしていきましょう。
選び出した言葉をヒントに、「相談者の本質的な問題は何か?」を見立てていきます。ここでも復習になりますが、便利な「5つの視点(不足)」を物差しにすると、考えがまとまりやすくなりますよ。
「5つの視点」を思い出そう
引いた線が示す相談者の状態は、この中のどれに繋がりそうでしょうか?
① 自己理解がもう少し必要かも?
- 自分の「好きなこと」「大切にしたいこと」「得意なこと」などを、まだ整理しきれていない状態。
- サインの例:「自分のやりたいことが、よく分からなくて」「何が得意なのか、自信がないんです」
② 仕事へのイメージが固まっているかも?
- 特定の仕事や業界について、「きっとこうに違いない」という少し偏ったイメージを持っている状態。
- サインの例:「企画の仕事は楽しそう」「今の仕事は、私には合わない気がする」
③ 周囲とのコミュニケーションに課題があるかも?
- 職場の上司や同僚、または家族など、大切な人との対話が、もう少し必要かもしれない状態。
- サインの例:「上司に本音はなかなか言えません」「家族はきっと反対すると思います」
④ もう少し情報収集が必要かも?
- キャリアを考える上で、選択肢を広げるための情報が足りていない状態。
- サインの例:「どうやって仕事を探したらいいか分からなくて」「どんな選択肢があるのか見当もつきません」
⑤ 将来のイメージがまだ描けていないかも?
- 「これからどうなっていきたいか」という、少し先の未来像を具体的に描けていない状態。
- サインの例:「このままでいいのかなって、漠然と不安で」「将来の目標とかは、特に…」
解答のコツ
- 見立ての数は1〜3個、でも2つがおすすめ:相談者の問題は一つとは限らないので、見立ては複数見つかることが多いです。解答のスタイルによりますが、1〜3個の間で「優先度が高い」と考えるものを選びましょう。
- 文字数と設問4とのつながりを意識しよう:ただし、3つ書こうとすると、一つひとつの根拠を説明する文字数が足りなくなってしまうかもしれません。また、ここでの見立ては、次の設問4で「どんな支援をするか」を考える土台になります。設問4でしっかり支援策を書くためにも、欲張らずに絞るのがポイントです。
- 迷ったら2つで安心:多くの受験生が「この見立てで本当に合っているかな?」と不安に感じることもあるようです。そんな時、1つだけだと心細いかもしれません。精神的な安心のためにも、これだと思うものを2つ選ぶのが無難で、おすすめです。
ステップ2:見立てと根拠をセットで記述しよう(解答作成)
ここまで来ればあと一息です。見立てた問題と、その根拠として選んだ逐語録の言葉をセットにして、解答用紙に書いていきましょう。大切なのは、「①この問題があると思います。②なぜなら、相談者がこう言っていたからです」というように、両者がきちんと繋がっていることを採点者に伝えることです。
解答の構成例(イメージ)
設問3① キャリアコンサルタントから見た相談者の問題 1.ご自身の価値観や強みへの理解が、もう少し必要である点(自己理解不足) 2.お仕事に対するイメージが、少し固まっている点(仕事理解不足)
設問3② 上記を問題と判断した根拠 (1の根拠)「自分の強みが何か、これまで考えたこともなかった」というご発言から、ご自身の魅力について、まだ十分に振り返る機会がなかったことがうかがえるため。 (2の根拠)「営業は大変そう」という言葉から、営業職の幅広い魅力や多様な側面について、まだ知る機会がなかった可能性があると考えられるため。
論述試験は難しく感じるかもしれませんが、一つひとつのステップを丁寧に進めれば、きっとあなたの温かい視点が伝わる答案になりますよ。応援しています!
設問4の解き方
設問4は、設問3で立てた「見立て(相談者の問題点)」を解決するために、キャリアコンサルタントとして今後どのように支援していくか、その具体的なプランを示す、論述試験の総仕上げとなるパートです。
設問4における絶対原則
設問4の解答で最も重要なのは、「設問3で述べた相談者の見立て(問題点)との一貫性」です。ここがブレると、どんなに優れた支援策を書いても評価されません。全ての支援は、設問3で特定した問題点を解決するために存在することを明確に示しましょう。
書き出しのコツ: 「設問3で述べた〇〇(自己理解不足など)に対し、…」と始めることで、一貫性を明確にアピールできます。
合格答案の重要要素
このグラフは、高得点を狙う上で特に重視すべき要素を視覚化したものです。各要素がどのように評価に影響するかを理解しましょう。
1.最も重要なポイント:「一貫性」
設問4で最も重視されるのは、設問3で指摘した相談者の問題との「一貫性」です。設問3で挙げた問題点を解決するための支援でなければ、評価されません。
不慣れなうちは、
書き始める際、
「設問2で指摘した〇〇(例:自己理解不足)に対し、まずは…」
のように記述することで、解答に一貫性があることを明確に示せますし、自身でも一貫性のある解答を導き出しやすいです。
2.支援の基本構成(定石)
どのような事例であっても、支援の基本となる流れ(定石)があります。この構造に沿って記述することで、論理的で説得力のある解答になります。
- ゴール設定:この支援で、相談者にどうなってほしいか?
- (例:主体的にキャリアを選択できるようになる、など)
- 具体的な関わり方(支援の4ステップ)
- ① (引き続き)信頼関係を深める(ラポール形成)
- 何よりもまず、相談者の気持ちに寄り添う姿勢が重要です。「CLの〇〇という気持ちに寄り添い、信頼関係を深める」ことから始めます。
- ② 自己理解を促す
- 相談者が自分自身について深く知るための支援です。(例:経験の棚卸し、価値観の明確化など)
- ③ 仕事理解を促す
- 社会や仕事についての理解を深めるための支援です。(例:情報収集のサポートなど)
- ④ 意思決定を支える
- 相談者が自ら進むべき道を決められるよう、具体的な行動計画を一緒に考えます。
- ① (引き続き)信頼関係を深める(ラポール形成)
3.問題に対する具体的な支援策・アセスメントツールの例
設問3の見立て(問題点)に応じて、具体的な支援策(理論やアセスメントツールなど)を提示します。最適なものを1つか2つに絞るのが望ましいでしょう。以下に代表的なツールとその目的をまとめます。
| 支援の目的 | 具体的なツール・アプローチの例 | 主な用途・特徴 |
| 自己理解を促す | ジョブ・カード(キャリアプランシート、職務経歴シート等) | これまでの経験や能力、価値観を整理し、キャリアプランを作成する公的ツール。 |
| 各種アセスメントツール・VPI職業興味検査・職業レディネス・テスト(VRT)・キャリア・インサイト | 興味、自信、価値観などを多角的に測定し、自己理解と職業理解を深める。 | |
| キャリア・アンカーを探る | 対話を通して、個人がキャリア選択において最も大切にする価値観や動機(専門性、自律、安定など)を明確化する。 | |
| 対象者別アプローチ(厚労省提供)・自己棚卸しシート(女性向け)・自己理解シート(中高年向け) | ライフステージに合わせた視点で自己理解を深めるためのワークシート。 | |
| 仕事理解を促す | job tag(日本版O-NET) | 様々な職業の仕事内容、求められるスキル、興味・価値観との関連などを総合的に検索・比較できるWebサイト。職業興味検査なども実施可能。 |
| ハローワーク、地域若者サポートステーション | 公的な職業紹介機関や支援機関。求人情報の提供、セミナー、個別相談などを行う。 | |
| 業界・企業研究のサポート | OB・OG訪問、インターンシップ、企業説明会などの情報提供や活用方法を一緒に考える。 | |
| キャリアビジョン・プランニング | ジョブ・カード(キャリアプランシート) | 中長期的な視点で、これからの仕事や生き方についての考えを深め、具体的な目標設定を促す。 |
| ライフプランニングシート(中高年向け) | 人生後半戦を見据え、経済面も含めたライフプランを検討するためのシート。 |
4.得点を安定させるコツと減点されやすいパターン
✅ 得点を安定化させるコツ
- 「構造」で書く:段落や番号を使い、論理的で読みやすい文章を心がける。
- 「心理・職業・情報」の3視点で整理:支援内容に偏りがないか確認する。
- 「感情に寄り添い、自己理解を促し、行動支援へ」:この3段階の流れを解答の中で明示する。
- 支援策は1つか2つに絞る:理論やアセスメントツールを多く挙げすぎると、一つひとつの理解が浅い印象を与えかねません。相談者の問題解決に最も効果的だと思われる最適なものを1つか2つに絞り、なぜそれを用いるのかを具体的に記述しましょう。
- 相談者が主役であることを示す:「~を促す」「~を一緒に考える」といった言葉を使い、「指導する」のような一方的な表現は避ける。
- 短期目標と長期目標を分ける:「次回面談まで」と「最終的なゴール」を分けて書くと、計画性が伝わりやすくなる。
🔶 減点されやすいパターン
- CLの発言を勝手に脚色・想像する:事例相談記録に書かれていないことを憶測で書く。
- 「アドバイス」ばかりで傾聴・関係構築がない:相談者の気持ちを無視して支援を進めようとする。
- 理論の単語だけを乱発して意味不明:理論の背景や目的を理解せずに単語だけ並べる。
- 文が長く、何を言いたいか分からない:一文を短く、簡潔に書くことを意識する。
- 支援方針が現実的でない:関係構築もできていないのに、いきなり転職支援を始めるなど。
合格の分かれ目は「一貫性」
論述試験で最も大切なことは、設問1から設問4まで、スジの通った一貫したストーリーになっているかどうかです。
「相談者はこう訴えている(問1)→その背景には専門的に見るとこういう問題がある(問2)(問3)→だから、その問題を解決するためにこう支援する(問3)」
この流れを常に意識してください。
【問題を解いてみよう!】
ケーススタディ
【事例記録】 *キャリアコンサルタントが今後の研鑽に生かすための、作成途中の事例記録
相談者情報: Yさん、女性、38歳、独身。中堅の食品メーカーで営業事務として15年勤務(正社員)。
相談者の話した内容: (カッコ内はキャリアコンサルタントの発言)
今の仕事はもう15年になります。人間関係もいいですし、給料や待遇に大きな不満があるわけではありません。ただ、毎日同じことの繰り返しで…。このままずっと、この仕事を続けていくのかなと思うと、少し息が詰まるような感じがするんです。
(息が詰まるような感じ、ですか)
はい…。実は、学生の頃からイラストを描くのが好きで、今でも趣味で時々描いているんです。最近、SNSで同年代の人が未経験からデザイナーに転職したという投稿を見て、すごくキラキラして見えて…。私も、もっと好きなことを仕事にできたら、毎日が楽しいだろうなって。でも、私には専門的なスキルもないし、もう38歳ですしね。今から新しいことを始めるなんて、無謀ですよね。安定した今の仕事を捨てるリスクを考えると、やっぱり無理かなって…。
(安定した現状を手放すことへの不安と、好きなことに挑戦したいというお気持ちとの間で、揺れていらっしゃるのですね)【下線B】
そうなんです。周りの友人からは「安定が一番だよ」と言われますし、自分でもそう思うんです。でも、心のどこかで、このままでいいのかなって…。挑戦しないで後悔するのも怖い。でも、挑戦して失敗するのも怖いんです。結局、どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって。
演習問題に挑戦
設問1
事例記録の中の「相談の概要」に相当する、相談者がこの面談で相談したいことは何か。事例記録を手掛かりに記述せよ。(10点)
【解答例】
現職は15年目で安定しているが息が詰まる感じがし、好きな事を仕事にしたい憧れと、スキルや年齢への不安との間で、どうしたいか分からなくなっている為、相談したい。(90文字)
【別解】(慣れている方向け)
安定した仕事に閉塞感を持ち、好きな事を仕事にしたいと望むが、年齢やスキル不安から踏み出せない。挑戦しない後悔と失敗への恐怖の間で揺れ、どうしたいか分からなくなっている。(89文字)
【解説】
相談者の中心的な悩みである「葛藤」を明確にすることがポイントです。「現状への不満」「理想・憧れ」「行動できない理由」「結果としての混乱」の4つの要素を盛り込み、相談者が板挟みになっている状態を要約します。
設問2
事例記録の【下線B】について、この事例を担当したキャリアコンサルタントがどのような意図で応答したと考えるかを記述せよ。(10点)
【解答例】
相談者が語る安定への不安と挑戦への憧れという相反する気持ちを要約して伝え返す。これにより自身の葛藤を客観視させ、受容されたと感じることで安心して自己探索を深めてもらう意図。(92文字)
【解説】
この応答は「感情の反映」という技法です。目的は、相談者の相反する気持ちを言語化し、ラポール(信頼関係)を深めることです。効果として、相談者自身の自己理解を深めるきっかけになります。この2点を簡潔に記述することが求められます。
設問3
あなたが考える相談者の問題(①)とその根拠(②)について、相談者の言動を通じて、具体的に記述せよ。(20点)
【解答例】
| ① 問題 | ② その根拠 |
|---|---|
| 自身の興味や価値観を認識しつつも、安定と挑戦との間で葛藤し、意思決定ができない。(自己理解不足)(52文字) | 「後悔も失敗も怖い」「どうしたいのか分からない」との発言から、価値観の優先順位付けができず、行動を選択できないため。(68文字) |
| SNSの情報からデザイナーに憧れるも、必要なスキル等の現実的な情報を収集できていない。(仕事理解不足)(55文字) | 「SNSで」「スキルもない」「無謀」との発言から、情報収集せず思い込みで可能性を狭めているため。(55文字) |
【解説】
「自己理解不足」と「仕事理解不足」の2つの視点から問題を捉えるのが定石です。必ず「〜という発言から、〜という点が問題」という形で、根拠(相談者の言葉)と見立て(CCの視点)をセットで記述しましょう。
設問4
設問3で答えた内容を踏まえ、今後あなたがこのケースを担当するとしたら、どのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか記述せよ。(10点)
【解答例】
まず、安定と挑戦の間で揺れる気持ちに寄り添い、安心して本音を話せる関係性を維持する。その上で、キャリアの棚卸しを通じて、Yさんが本当に大切にしたい価値観や仕事のやりがいを明確化し、自己理解を深める。並行して、デザイナーという職業の具体的な情報(必要なスキル、学習方法、働き方等)や、「好き」を仕事にする多様な形(副業、趣味の充実等)について共に調べ、仕事理解を促進する。最終的に、複数の選択肢のメリット・デメリットを整理し、Yさん自身が納得して今後の方向性を主体的に意思決定できるよう支援する。
【解説】
問3で挙げた2つの問題点を解決するための具体的なプロセスを示します。「関係構築→自己理解→仕事理解→意思決定」という流れは、多くの事例で使える王道の構成です。
問題 次の【事例記録】を読み、以下の設問に答えなさい。
【事例記録】 *キャリアコンサルタントが今後の研鑽に生かすための、作成途中の事例記録
相談者情報: Yさん、女性、38歳、独身。中堅の食品メーカーで営業事務として15年勤務(正社員)。
相談の概要: 【略A】
相談者の話した内容: (カッコ内はキャリアコンサルタントの発言)
今の仕事はもう15年になります。人間関係もいいですし、給料や待遇に大きな不満があるわけではありません。ただ、毎日同じことの繰り返しで…。このままずっと、この仕事を続けていくのかなと思うと、少し息が詰まるような感じがするんです。
(息が詰まるような感じ、ですか)
はい…。実は、学生の頃からイラストを描くのが好きで、今でも趣味で時々描いているんです。最近、SNSで同年代の人が未経験からデザイナーに転職したという投稿を見て、すごくキラキラして見えて…。私も、もっと好きなことを仕事にできたら、毎日が楽しいだろうなって。でも、私には専門的なスキルもないし、もう38歳ですしね。今から新しいことを始めるなんて、無謀ですよね。安定した今の仕事を捨てるリスクを考えると、やっぱり無理かなって…。
(安定した現状を手放すことへの不安と、好きなことに挑戦したいというお気持ちとの間で、揺れていらっしゃるのですね)【下線B】
そうなんです。周りの友人からは「安定が一番だよ」と言われますし、自分でもそう思うんです。でも、心のどこかで、このままでいいのかなって…。挑戦しないで後悔するのも怖い。でも、挑戦して失敗するのも怖いんです。結局、どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって。
(以下略)
【設問】
設問1 事例記録の中の「相談の概要」 【略A】の記載に相当する、相談者がこの面談で相談したいことは何か。事例記録を手掛かりに記述せよ。(10点)
設問2 事例記録の【下線B】について、この事例を担当したキャリアコンサルタントがどのような意図で応答したと考えるかを記述せよ。(10点)
設問3 あなたが考える相談者の問題(①)とその根拠(②)について、相談者の言動を通じて、具体的に記述せよ。(20点)
設問4 設問3で答えた内容を踏まえ、今後あなたがこのケースを担当するとしたら、どのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか記述せよ。(10点)
【解答・解説】
設問1:相談者がこの面談で相談したいことは何か。
【解答例】 現在の安定した仕事に閉塞感を覚え、好きなことを仕事にしたいという憧れがある。しかし、年齢やスキルへの不安、現状を失うリスクから一歩を踏み出せずにいる。「安定」と「挑戦」の間で気持ちが揺れ動き、挑戦しない後悔と失敗する恐怖の両方を感じ、自分がどうしたいのか分からなくなっている。
【解説】 相談者の中心的な悩みである**「葛藤」**を明確にすることがポイントです。
- 現状への不満: 「息が詰まるような感じ」
- 理想・憧れ: 「好きなことを仕事にできたら」
- 行動できない理由(不安・リスク): 「スキルもないし、もう38歳」「安定した今の仕事を捨てるリスク」
- 結果としての混乱: 「どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって」
これらの要素を盛り込み、相談者が板挟みになっている状態を要約します。
設問2:【下線B】の応答の意図は何か。
【解答例】 相談者が言葉にした「安定した現状を手放すことへの不安」と、言葉の背景にある「好きなことに挑戦したいという気持ち」という二つの相反する感情を要約して伝え返している。これにより、相談者自身がその葛藤を客観視できるよう促し、その気持ちが受容されたと感じることで、安心して自己探索を深められるよう支援する意図。
【解説】 キャリアコンサルタントの応答の意図を問う問題です。これは**「感情の反映」**技法の一つです。
- 目的: 相談者が表明した気持ち(不安)と、その裏にある気持ち(挑戦したい)の両方を言語化することで、「私の気持ちを分かってくれている」という**ラポール(信頼関係)**を深めます。
- 効果: 相談者自身が「自分は二つの気持ちで揺れているんだ」と自己理解を深めるきっかけになります。
この2点を簡潔に記述することが求められます。
設問3:あなたが考える相談者の問題と、その根拠は何か。
【解答例】
| ① 問題 | ② その根拠 |
|---|---|
| 自身の興味・関心(イラスト)と、仕事に求める価値観(やりがい、楽しさ)を認識しつつも、それをキャリアにどう位置づけるかという自己理解の不足と、それに基づく意思決定の困難。 | 「挑戦しないで後悔するのも怖い。でも、挑戦して失敗するのも怖い」「結局、どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって」という発言から、価値観の優先順位付けができず、行動を選択できない点。 |
| デザイナーという職業への憧れはあるが、SNSの断片的な情報に影響されており、必要なスキルや未経験からのキャリアパスといった現実的な情報を収集・吟味できていない仕事理解の不足。 | 「SNSで同年代の人が…」「私には専門的なスキルもないし」「今から新しいことを始めるなんて、無謀ですよね」という発言から、具体的な情報探索を行わず、思い込みで可能性を狭めている点。 |
【解説】 解答の**「心臓部」です。「自己理解不足」と「仕事理解不足」**の2つの視点から問題を捉えるのが定石です。
- 自己理解不足: Yさんは「好きなこと」は分かっていますが、「安定」という価値観との間でどう折り合いをつけるか、という価値観の明確化ができていません。これが意思決定を困難にしています。
- 仕事理解不足: 「キラキラして見えて」という憧れ先行で、デザイナーという仕事の現実(厳しさ、必要な努力など)が見えていません。情報不足が「無謀だ」という固定観念を生んでいます。
必ず**「〜という発言から、〜という点が問題」**という形で、根拠(相談者の言葉)と見立て(CCの視点)をセットで記述しましょう。
設問4:今後どのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか。
【解答例】 まず、安定と挑戦の間で揺れる気持ちに寄り添い、安心して本音を話せる関係性を維持する。その上で、キャリアの棚卸しを通じて、Yさんが本当に大切にしたい価値観や仕事のやりがいを明確化し、自己理解を深める。並行して、デザイナーという職業の具体的な情報(必要なスキル、学習方法、働き方等)や、「好き」を仕事にする多様な形(副業、趣味の充実等)について共に調べ、仕事理解を促進する。最終的に、複数の選択肢のメリット・デメリットを整理し、Yさん自身が納得して今後の方向性を主体的に意思決定できるよう支援する。
【解説】 問3で挙げた2つの問題点を解決するための具体的なプロセスを示します。
- 関係構築の継続(前提)
- 自己理解の深化: 価値観の明確化を支援する。
- 仕事理解の促進: 思い込みをなくし、現実的な情報を得る支援をする。
- 意思決定の支援: 選択肢を整理し、本人が選べるようにサポートする。
この**「関係構築→自己理解→仕事理解→意思決定」**という流れは、多くの事例で使える王道の構成です。



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