【論述】論述対策・コツと予想問題

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目次

論述問題を解答する際のポイント・テクニック

1. 全体像を素早く正確に把握する

事例記録を最初に読む際は、以下の視点を意識すると、相談の全体像を効率的かつ立体的に掴むことができます。

  • 相談者の基本情報(Who): 年齢、職業、家族構成など。
  • 相談の主訴(What): 相談者が「今、一番困っていること」は何か。逐語の最後の言葉がヒントになることが多いです。
  • 背景・経緯(Why): なぜその問題が起きたのか。過去の職歴、人間関係、価値観の変化など。
  • 感情・気持ち(Feeling): 嬉しい、つらい、どうしたらいいか分からない、など、相談者の感情を表す言葉に印をつけながら読みましょう。
  • 関係者(Stakeholder): 家族、上司、同僚など、相談に誰が関わっているのかを把握します。キーパーソンとの関係性は、見立ての重要な根拠となります。
  • 時間軸(Time): いつからその問題が続いているのか、問題の発生時期や期間を確認します。

2. 各設問の「お作法」を理解する

各設問には、評価されるための「型」や「お作法」があります。

設問1(相談したいこと)

「〜だが、〜で困っている。どうすればよいか相談に来た。」という構文でまとめると書きやすいです。 【事実(例:正社員登用の打診)】+【感情・気持ち(例:頑張りたい)】+【障害(例:父の反対)】+【結果(例:どうすればよいか分からない)】の要素を盛り込みましょう。

さらに、相談の主訴の背景にある「本当に確かめたいこと」は何かを意識すると、より深みのある要約になります。例えば、「父を説得する方法」が主訴に見えても、その根底に「自分の選択に自信を持ちたい」という欲求が隠れている場合があり、これを捉えることで設問3以降の解答に繋げやすくなります。

設問2(応答の意図)

キャリアカウンセリングの基本である「信頼関係の構築(ラポール形成)」と「自己探索の促進」の2つの視点から書くのが定石です。

「相談者の〜という気持ちを受け止め、共感的に伝えることで信頼関係を深めるとともに、その気持ちの背景にある価値観などへの自己探索を促す意図がある。」という流れを基本としつつ、「なぜその応答なのか」をより具体的に記述しましょう。例えば、「相談者の『〜』という言葉を繰り返して伝え返すことで、話した内容が確かに伝わっているという安心感を与え、ラポール形成をより強固にする」のように、カウンセリング技法とそれがもたらす効果を明確に結びつけます。

また、「この応答をきっかけに、次は〜について尋ね、自己探索を深めてもらう」といった、次の展開への布石としての意図を示すことも有効です。

設問3(相談者の問題と根拠)

キャリアコンサルタントの視点で、相談者自身がまだ気づいていないキャリア形成上の課題を見立てます。「自己理解不足」「職業理解不足」「(主体的)意思決定の課題」「コミュニケーション不足」といったフレームワークに当てはめて考えると、問題点を整理しやすくなります。

根拠は必ず事例記録中の相談者の言動から引用・要約し、「〜という発言から、〜であることがうかがえる」というように、問題と根拠を明確に結びつけましょう。

問題点は1つとは限らないため、「最大の課題は〜である。それに加え、〜という課題も見受けられる」のように、主要な問題と副次的な問題を構造化して複数挙げることで、相談者を多角的に捉えていることをアピールできます。その際、複数の発言を根拠として組み合わせると、見立ての説得力が高まります。

設問4(今後の方針)

設問3で書いた「問題」を解決するための具体的な支援計画を、設問3との一貫性を意識して書きます。 ①関係構築の継続 → ②自己理解支援 → ③職業理解支援 → ④意思決定支援という流れが基本的な構成です。

この構成に沿いつつ、「短期的な目標(今回の意思決定支援など)」と「中長期的な目標(今後の主体的なキャリア形成力の向上など)」の両方を示すと、より視野の広い支援計画になります。「自己理解支援」では「ジョブ・カードやキャリア・アンカーなどのツールを用いて、価値観や興味を可視化する」のように、具体的なツール名や理論名を出すことで、専門性を示すことができます。

3. 時間配分を意識する

試験時間は50分と限られています。以下のような時間配分を目安に、過去問で練習を重ねてみてください。

  • 事例記録の読み込み・構成メモ作成: 10分
  • 設問1・2の記述: 15分
  • 設問3・4の記述: 20分
  • 全体の見直し: 5分

最初の10分で、事例記録の余白に各設問の解答の骨子(設問1:主訴、設問2:意図、設問3:問題点と根拠、設問4:方針)となるキーワードを書き出すのがおすすめです。このメモを見ながら記述することで、時間切れのリスクを減らし、解答の一貫性を保ちやすくなります。

4. 「CC協議会らしさ」を意識する

キャリアコンサルティング協議会(CC協議会)の論述試験では、相談者の内面的な気づきだけでなく、ジョブ・カードの活用や客観的な情報収集支援など、問題解決に向けた具体的な行動計画やキャリアプランニングを支援する視点が求められます。

この点を意識し、相談者個人の内面支援だけでなく、「環境への働きかけ」を支援する視点も重要です。例えば、上司や家族とのコミュニケーション方法を一緒に考えたり、企業の制度の活用を情報提供したりする姿勢が評価されます。最終的には、相談者が「自分ならできる」と思えるような、自己効力感を高める支援をゴールとすることを意識しましょう。

インタラクティブに定着させよう

Step 1: 全体像を素早く正確に把握する

事例記録を読む最初のステップが最も重要です。以下の6つの視点を意識することで、相談の全体像を効率的かつ立体的に掴むことができます。

相談者の基本情報 (Who)

年齢、職業、家族構成など、相談者のプロフィールを正確に押さえます。

相談の主訴 (What)

相談者が「今、一番困っていること」は何か。逐語の最後の言葉がヒントになることが多いです。

背景・経緯 (Why)

なぜその問題が起きたのか。過去の職歴、人間関係、価値観の変化などを読み解きます。

感情・気持ち (Feeling)

嬉しい、つらい、どうしたらいいか分からない等、感情を表す言葉に印をつけながら読み進めます。

関係者 (Stakeholder)

家族、上司、同僚など、相談に誰が関わっているのか。キーパーソンとの関係性が重要です。

時間軸 (Time)

いつからその問題が続いているのか。問題の発生時期や期間を確認します。

Step 2: 各設問の「お作法」を理解する

各設問には評価されるための「型」があります。ここでは、設問ごとの効果的な解答構成を解説します。下のタブをクリックして詳細を確認してください。

設問1: 相談したいことの要約

相談者が最も伝えたいことを的確に捉え、要約します。以下の構文を意識すると、論理的で分かりやすい文章になります。

基本構文: 「〜だが、〜で困っている。どうすればよいか相談に来た。」

【事実】 正社員登用の打診があったが、

【感情・気持ち】 頑張りたい気持ちはあるものの、

【障害】 父の反対という問題があり、

【結果】 どうすればよいか分からず困っている。

ポイント: 表面的な問題だけでなく、その背景にある「自分の選択に自信を持ちたい」といった深層的な欲求を捉えることが、後の設問への繋がりを良くします。

Step 3: 時間配分を意識する

試験時間は50分と限られています。以下の時間配分を目安に、過去問で練習を重ねてペースを掴みましょう。

ポイント: 最初の10分で、各設問の解答の骨子となるキーワードをメモしておくと、時間切れのリスクを減らし、解答の一貫性を保ちやすくなります。

Step 4: 「CC協議会らしさ」で合格を掴む

キャリアコンサルティング協議会の試験では、内面的な気づきに加え、より具体的・行動的な支援の視点が評価される傾向にあります。

💡

具体的な行動計画

ジョブ・カードの活用や客観的な情報収集支援など、問題解決に向けた具体的なプランニングを支援する視点を盛り込みましょう。

🤝

環境への働きかけ

相談者個人だけでなく、上司や家族とのコミュニケーション方法を一緒に考えるなど、環境へのアプローチを支援する姿勢も重要です。

🚀

自己効力感の向上

最終的に、相談者が「自分ならできる」と自信を持って一歩を踏み出せるような、自己効力感を高める支援をゴールとします。

【予想問題①】

問題 次の【事例記録】を読み、以下の設問に答えなさい。

【事例記録】 *キャリアコンサルタントが今後の研鑽に生かすための、作成途中の事例記録

相談者情報: Yさん、女性、38歳、独身。中堅の食品メーカーで営業事務として15年勤務(正社員)。

相談の概要: 【略A】

相談者の話した内容: (カッコ内はキャリアコンサルタントの発言)

今の仕事はもう15年になります。人間関係もいいですし、給料や待遇に大きな不満があるわけではありません。ただ、毎日同じことの繰り返しで…。このままずっと、この仕事を続けていくのかなと思うと、少し息が詰まるような感じがするんです。

(息が詰まるような感じ、ですか)

はい…。実は、学生の頃からイラストを描くのが好きで、今でも趣味で時々描いているんです。最近、SNSで同年代の人が未経験からデザイナーに転職したという投稿を見て、すごくキラキラして見えて…。私も、もっと好きなことを仕事にできたら、毎日が楽しいだろうなって。でも、私には専門的なスキルもないし、もう38歳ですしね。今から新しいことを始めるなんて、無謀ですよね。安定した今の仕事を捨てるリスクを考えると、やっぱり無理かなって…。

(安定した現状を手放すことへの不安と、好きなことに挑戦したいというお気持ちとの間で、揺れていらっしゃるのですね)【下線B】

そうなんです。周りの友人からは「安定が一番だよ」と言われますし、自分でもそう思うんです。でも、心のどこかで、このままでいいのかなって…。挑戦しないで後悔するのも怖い。でも、挑戦して失敗するのも怖いんです。結局、どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって。

(以下略)

【設問】

設問1 事例記録の中の「相談の概要」 【略A】の記載に相当する、相談者がこの面談で相談したいことは何か。事例記録を手掛かりに記述せよ。(10点)

設問2 事例記録の【下線B】について、この事例を担当したキャリアコンサルタントがどのような意図で応答したと考えるかを記述せよ。(10点)

設問3 あなたが考える相談者の問題(①)とその根拠(②)について、相談者の言動を通じて、具体的に記述せよ。(20点)

設問4 設問3で答えた内容を踏まえ、今後あなたがこのケースを担当するとしたら、どのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか記述せよ。(10点)

【解答・解説】

設問1:相談者がこの面談で相談したいことは何か。

【解答例】 現在の安定した仕事に閉塞感を覚え、好きなことを仕事にしたいという憧れがある。しかし、年齢やスキルへの不安、現状を失うリスクから一歩を踏み出せずにいる。「安定」と「挑戦」の間で気持ちが揺れ動き、挑戦しない後悔と失敗する恐怖の両方を感じ、自分がどうしたいのか分からなくなっている。

【解説】 相談者の中心的な悩みである**「葛藤」**を明確にすることがポイントです。

  1. 現状への不満: 「息が詰まるような感じ」
  2. 理想・憧れ: 「好きなことを仕事にできたら」
  3. 行動できない理由(不安・リスク): 「スキルもないし、もう38歳」「安定した今の仕事を捨てるリスク」
  4. 結果としての混乱: 「どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって」

これらの要素を盛り込み、相談者が板挟みになっている状態を要約します。

設問2:【下線B】の応答の意図は何か。

【解答例】 相談者が言葉にした「安定した現状を手放すことへの不安」と、言葉の背景にある「好きなことに挑戦したいという気持ち」という二つの相反する感情を要約して伝え返している。これにより、相談者自身がその葛藤を客観視できるよう促し、その気持ちが受容されたと感じることで、安心して自己探索を深められるよう支援する意図。

【解説】 キャリアコンサルタントの応答の意図を問う問題です。これは**「感情の反映」**技法の一つです。

  • 目的: 相談者が表明した気持ち(不安)と、その裏にある気持ち(挑戦したい)の両方を言語化することで、「私の気持ちを分かってくれている」という**ラポール(信頼関係)**を深めます。
  • 効果: 相談者自身が「自分は二つの気持ちで揺れているんだ」と自己理解を深めるきっかけになります。

この2点を簡潔に記述することが求められます。

設問3:あなたが考える相談者の問題と、その根拠は何か。

【解答例】

① 問題② その根拠
自身の興味・関心(イラスト)と、仕事に求める価値観(やりがい、楽しさ)を認識しつつも、それをキャリアにどう位置づけるかという自己理解の不足と、それに基づく意思決定の困難「挑戦しないで後悔するのも怖い。でも、挑戦して失敗するのも怖い」「結局、どうしたいのか自分でも分からなくなってしまって」という発言から、価値観の優先順位付けができず、行動を選択できない点。
デザイナーという職業への憧れはあるが、SNSの断片的な情報に影響されており、必要なスキルや未経験からのキャリアパスといった現実的な情報を収集・吟味できていない仕事理解の不足「SNSで同年代の人が…」「私には専門的なスキルもないし」「今から新しいことを始めるなんて、無謀ですよね」という発言から、具体的な情報探索を行わず、思い込みで可能性を狭めている点。

【解説】 解答の**「心臓部」です。「自己理解不足」と「仕事理解不足」**の2つの視点から問題を捉えるのが定石です。

  • 自己理解不足: Yさんは「好きなこと」は分かっていますが、「安定」という価値観との間でどう折り合いをつけるか、という価値観の明確化ができていません。これが意思決定を困難にしています。
  • 仕事理解不足: 「キラキラして見えて」という憧れ先行で、デザイナーという仕事の現実(厳しさ、必要な努力など)が見えていません。情報不足が「無謀だ」という固定観念を生んでいます。

必ず**「〜という発言から、〜という点が問題」**という形で、根拠(相談者の言葉)と見立て(CCの視点)をセットで記述しましょう。

設問4:今後どのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか。

【解答例】 まず、安定と挑戦の間で揺れる気持ちに寄り添い、安心して本音を話せる関係性を維持する。その上で、キャリアの棚卸しを通じて、Yさんが本当に大切にしたい価値観や仕事のやりがいを明確化し、自己理解を深める。並行して、デザイナーという職業の具体的な情報(必要なスキル、学習方法、働き方等)や、「好き」を仕事にする多様な形(副業、趣味の充実等)について共に調べ、仕事理解を促進する。最終的に、複数の選択肢のメリット・デメリットを整理し、Yさん自身が納得して今後の方向性を主体的に意思決定できるよう支援する。

【解説】 問3で挙げた2つの問題点を解決するための具体的なプロセスを示します。

  1. 関係構築の継続(前提)
  2. 自己理解の深化: 価値観の明確化を支援する。
  3. 仕事理解の促進: 思い込みをなくし、現実的な情報を得る支援をする。
  4. 意思決定の支援: 選択肢を整理し、本人が選べるようにサポートする。

この**「関係構築→自己理解→仕事理解→意思決定」**という流れは、多くの事例で使える王道の構成です。

ケース概要:Yさんの状況

このケーススタディでは、38歳で勤続15年のYさん(女性)が直面するキャリアの葛藤を探ります。安定した現状への閉塞感と、好きなことへ挑戦したいという憧れの間で揺れ動くYさんの状況を理解しましょう。

38
年齢
15
勤続年数
正社員
雇用形態
営業事務
職種

相談の核心

「安定が一番だと思うけど、このままでいいのかな…。挑戦しないで後悔するのも、挑戦して失敗するのも怖い。どうしたいのか分からなくなってしまって…」

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