キャリアコンサルティングの面談では、客観的な情報に基づいて自己理解を深めるために、様々なアセスメントツールが活用されます。
今回は、学科試験で特によく出題される3つのツール「VPI職業興味検査」「職業レディネス・テスト」「OHBYカード」について、その特徴と試験で問われる核心部分を解説します。
目次
ホランド理論が共通点!3つのツールを覚えよう!
1. VPI職業興味検査 (Vocational Preference Inventory)
【最重要ポイント】
ホランド (Holland, J.L.) の六角形モデル(RIASEC理論) に完全に基づいた検査であること。VPIとホランドは常にセットで覚えてください。
開発者と理論的背景
- 開発者: ジョン・L・ホランド
- 理論的背景: ホランド理論(タイプ論)。個人のパーソナリティを6タイプ(現実的:R, 研究的:I, 芸術的:A, 社会的:S, 企業的:E, 慣習的:C)に分類し、職業環境との適合(マッチング)を重視します。
目的と対象
- 目的: 個人の職業興味の方向性と強さ、および興味の源泉となるパーソナリティを明らかにします。
- 対象: 大学生 〜 成人
特徴と検査内容
- 検査内容: 160の具体的な職業名リストに、興味の有無(好き/嫌い)で回答します。
- 特徴: 職業への興味を通して、パーソナリティを間接的に測定します。
結果の解釈
- RIASECの6尺度で結果が示され、上位3タイプで「3レターコード」が作られます。
- 補助概念として分化(Differentiation), 一貫性(Consistency), 一致性(Congruence)が重要です。
【試験対策のツボ】
- 「VPI=ホランド」と即答できるようにしましょう。
- 測定領域は「興味」と「パーソナリティ」。「自信度」は測定しない点が職業レディネス・テストとの比較で問われます。
- 「分化」「一貫性」「一致性」はホランド理論のキーワードとして頻出です。
2. 職業レディネス・テスト (Vocational Readiness Test)
【最重要ポイント】
ホランド理論を基に日本で開発され、「興味」 に加えて 「自信度(職務遂行の自信)」 も測定する点。
開発者と理論的背景
- 開発者: 労働省(現:厚労省)編、(独)労働政策研究・研修機構 (JILPT)
- 理論的背景: VPI同様、ホランド理論がベースですが、日本の若者向けに再構成されています。
目的と対象
- 目的: 自己理解を深め、職業選択への準備度(レディネス)を高めることを支援します。
- 対象: 中学生、高校生、大学生、若年者など
特徴と検査内容
3つの検査から構成されます:
- A検査(職業興味): 54の職業への興味の強さ。
- B検査(自信度): A検査と同じ職業を遂行できる自信の度合い。
- C検査(基礎的志向性): 日常行動から対データ(D)・対人(P)・対物(S)の3志向性を測定。
結果の解釈
- A検査(興味)とB検査(自信)の結果を比較することで、多角的な自己理解が可能です。
- C検査の結果は「D-P-Sチャート」で示されます。
【試験対策のツボ】
- 「興味」と「自信」の2軸で測定する点がVPIとの最大の違いです。
- 開発機関がJILPTであること、対象が若年層中心であることも押さえましょう。
- D-P-S(データ・人・物) というキーワードは、職業レディネス・テスト特有のものです。
3. OHBYカード
【最重要ポイント】
検査(テスト)ではなく、カードソートという非検査的(ノン・テスティング)アプローチであること。結果よりもプロセスを重視する点。
開発者と理論的背景
- 開発者: 厚生労働省、(独)労働政策研究・研修機構 (JILPT)
- 理論的背景: 特定の理論には依拠せず、カードソート技法を用います。クライエントの主観的な意味づけを大切にします。
目的と対象
- 目的: カードの仕分け作業を通して、職業興味や価値観を明確化し、自己理解と職業理解を同時に促進します。
- 対象: 中学生、高校生、大学生、若年者など
特徴と検査内容
- 内容: 48枚(または56枚)の職業イラストカードを、「好き」「嫌い」「わからない」に分類します。
- 特徴: 結果よりもプロセス(なぜそう分けたか)を重視します。正解・不正解がありません。
活用のポイント
分類の理由やカードの共通点、優先順位などを対話で深め、価値観を探索します。
【試験対策のツボ】
- 「非検査的(ノン・テスティング)」 は最重要キーワードです。
- 「プロセス重視」「主観的な意味づけ」 もセットで覚えましょう。
- 対話を通じて興味や価値観を探索していくツールであると理解してください。
まとめ:3つのツールの比較
各ツールの主な違いを一覧表とチャートで確認しましょう。特に「測定/探索領域」の違いは試験で問われやすいポイントです。
| 比較項目 | VPI職業興味検査 | 職業レディネス・テスト | OHBYカード |
|---|---|---|---|
| 開発者/機関 | ホランド | (独)労働政策研究・研修機構(JILPT) | (独)労働政策研究・研修機構(JILPT) |
| 理論的背景 | ホランド理論 | ホランド理論をベース | カードソート技法 |
| アプローチ | 検査的(ペーパーテスト) | 検査的(ペーパーテスト) | 非検査的(カードソート) |
| 測定/探索領域 | 興味, パーソナリティ | 興味, 自信, 基礎的志向性 | 興味, 価値観 |
| キーワード | RIASEC, 3レターコード | 興味と自信, D-P-Sチャート | プロセス重視, 主観 |
| 主な対象 | 大学生~成人 | 中学生~若年者 | 中学生~若年者 |

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